はい、今回このシリーズはこれでラストです。このシリーズの初めの方でも断りましたが、この作品はUBW・凛のグッドエンド~ホロウ・アタラクシアを経ての時計塔という流れを取っています。
まぁ取りあえずは前回の分から直接続いています。それではどうぞ。
そんなことを考えているときにまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「だ~か~ら、あたしは話したくないって言っているでしょ!」
「いーえっ、シェロの事で知らなきゃいけないことが沢山あるのが分かったから貴女に話してもらわないと!」
「だったら士郎にバイトの時にでも直接聞けばいいでしょうが!」
「聞いたことの裏付けが欲しいから貴女に話してって言っているのでしょう!」
…またルヴィア嬢と遠坂嬢がなにか言い争いをしている。実際言い争いレベルで事が収まるなら、単に賑やかな一日だ、くらいで済むのだが…と思っている間にまた組み手争いと鈍い打撃音が聞こえてきた。
ぱしっ、ピシっ、だん、びしゅっ…
「また始まった…」見ないふりしてこの場を立ち去りたい…が、このままだとまた周囲に被害が及びかねない。そして再び…
「こんの…くらえっ!」ズビュウ!「はっ、当たりませんわリン!」すたっ、ズヴュウ、ズヴュウ!
凛のガンドを躱しつつルヴィアもガンドを放って行く。凛もステップを踏んで躱しつつルヴィアへと間合いを詰めながら打撃と魔弾を打ち込み始める。ルヴィアも強化魔術で四肢をまといながら、凜へ組み手争いを行いつつ至近距離から魔弾を打ち込んでいく。
当然二人とも魔弾を躱していくのだが…すざましい身体能力に強化魔術で底上げをしているのだろうが…躱して外した魔弾は周囲に放たれるので、二人の様子を遠巻きに窺っていた学生たちに魔弾は向かっていくものも出てきていた。そこかしこで悲鳴が上がり始める。
…つい最近も同じような風景を目にした覚えがあるな…
ああ、今からでもいいから何も見なかったことにしてこの場を立ち去りたい…立ち去りたいが…
「くそっ…二人ともまたはじめやがって…」と彼女たちの方に振り向いた瞬間、いきなりの衝撃が襲った。
ずどぉう!「かはっ…?」
いきなり鳩尾《みぞおち》から体をえぐられるような衝撃と、そこからの衝撃で体が吹き飛ばされた。
どすっ!
「がはっ!?」
脚が宙に浮くほどの高さで壁に叩きつけられた後、床に倒れ込んだ。
「げ、先生?」「あら?」
凛とルヴィアも自分たちとは別の所からの異音に気づいてこちらを振り向いた。
「し、師匠大丈夫ですか?」「あらら~先生二人の流れ弾をもらっちゃんですか?」
離れたところからグレイとイヴェットの二人の声と走り寄る音が聞こえる。二人も通りかかったところだったのだろう。
その時そばの方から
「大丈夫ですか?」
と可愛らしい印象の女性の声がした。どこか以前に聞いた覚えがある、可憐だが芯がある声。
「あ、ああ、大丈夫とはいかないようだが…」
と声のした方に顔を向けた…そして。
「あ、あぁ…ああああああああああああああああああああああ_!?_」
「ど、どうしました?大丈夫ですか?」
「師匠!」
そばに来たグレイとイヴェットが私の状態を診ようとする。
「すいません、そこを開けて…」
と、そばにいる少女の方の顔を見てグレイも固まった。
「?どしたのグレイちゃ…」
そしてイヴェットも息をのんだ。
私が大声を上げ、グレイが固まった理由。
グレイと同じ顔の少女がそこにいた。
「え?え?グレイちゃんと同じ顔?こんな人現代魔術科《ノーリッジ》にいたっけ?」
「せ、セイバー?ここに来たの?」
「あら、セイバー、どうしたんですこんなところに来て?」
凛がその少女に向かって声をかけた。…って、『セイバー』って今…?
「お、セイバー、なんでここにいるんだ?」
その時別の通路から通りかかった士郎がその少女に声をかけた。
「はい士郎、リン、そしてこんにちはルヴィアさん、…今朝士郎が用意していたテキストを忘れていたので、こちらに届けに来たのです。」
「そうか、ありがとう…と、先生、グレイさんこんにちは。…どうしました?」
士郎だけがこの状況がつかめない様子でのどかな調子で声をかけてくる。
だがはじめは状況を把握できていなかった凛とルヴィアも、グレイと英霊《サーヴァント》・セイバーの鉢合わせを見て顔色が変わった。
「え、衛宮君…も、もしかしてそのお嬢さんは…?」
「え、あぁセイバーです。マスターとして契約しているから、一緒にこちら《時計塔》に来ているんです。」
なん…だと…?
私とグレイは共にその場で意識を失った。
ぼやけていく意識の中、聖杯戦争はまだ終わっていないようだ…そしてその余波は今後私たちにも確実に襲ってくることをうっすらと感じていた。
終
書き始めて程なくこのラストを思いつき、ただ中々最短では行きませんでしたね。燈子さんはじめクロスーバー路線になったし、それぞれのep.が膨らんだし…何より文章のめどが立った後のカットの作成で時間が取られたのも勿論、うまく描けねぇと来た。えぇ、描くほどに凹んでましたよ。
ただこれで一息付けます。
今回はカットと絡んだ周辺の文章のみ、抜粋という形でお見せしましたが、今後まとめた形でお見せできればと思っています。
それでは、ここまで目を通してくれる人があるのでしたら、今までありがとうございました。
2019-09-28 06:53:57 +0000