【夏暁】織田 環【死者】

しぐれ

✦夏暁に、お別れ【illust/75552041お邪魔いたします。

✦織田 環(おだ たまき)
享年25 / 5月14日生まれ / 男 / 174センチ
一人称:私、僕 / 二人称:君

7,80年ほど前に夏影町を発ち、現代に帰ってきた死者。
結婚を待たず置いて逝った「あの子」は家の決めた相手だったけれど、尊敬できるひとであり、心から大事に思っていた。「あの子」ではなくとも、「あの子」の面影を残す「君」に会えたことを大層喜ぶ。

✦素敵なご縁を頂きました!
「あの子」の遺した孫娘、幸せになってほしい大切な女の子:門脇 あいさん【illust/76285625
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未練があるとするならば。

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見慣れた海に、見慣れない道。

すれ違った少女の、異邦人のような金髪の隙間、初めてこちらを確かに一瞥したその瞳、その姿は。
ああ、成程。そういえば、最後に見たあの子も、これくらいの歳だった。

「失礼、そこのお嬢さん。…少しいいかな」

* * *

少女は淡白な物言いとは裏腹に、思いの外聡明で、寛容で、親切だった。

「この街も随分と立派になったね。見違えるようだよ。…うん、でも、海はずっと綺麗なままだ」

「あの子は旦那さんに…君のお祖父さんに出会えて、君みたいな良い子に見送られて。きっと幸せだっただろうよ。私はそれが知れただけで満足だ」
「良い子じゃない?どうして?好きな格好をしてるだけで悪い子なはずないだろう。あいさんは良い子だよ。現にこうして、私に付き合ってくれているじゃないか」

「すまないね、君の大事な時間を頂戴してしまって。私のことは気にせず…私かい?いいや、まさか。僕は君といられて、とても嬉しい」
「君のお祖母さんにも、すぐ謝るのをやめろってよく叱られたよ。
 そうだね、あの子のそういうところ、尊敬していたな。君もよく似ているよ。…よく言われる?」


本当に、よく似ている。
こちらをまっすぐに見上げる瞳も、横顔も、声も、少し素っ気なく聞こえる話し方も。
ああ、でも、この子は存外子どもっぽく笑う。

* * *

未練があるとするならば、
自分の選択が、彼女を不幸にしてはいないかと、それだけで。
彼女は自分が居なくても大丈夫だったと――自分は間違っていなかったのだと思えたなら、それでよかったのに。

…誤算だ。

あの子ではない君を、あの子と同じように、置いていくことが。
きっとこれから大人になっていく君を、見守れないことが、こんなにも悔しいなんて。

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2019-08-21 12:04:59 +0000