ロード・エルメロイ二世の邂逅録・カット5

龍実霞・マンガ描く日々。

9日のコミケ96、1日目 西地区“ぬ”19b 雲霞龍で持って行く予定のショートストーリーからの抜粋です。
前回投稿したのとは抜粋箇所が少し離れています。

「今回はあまり表に出てはいないようだが、私の頃は参加者が先代も含め軒並み危険な過去の持ち主ばかりでね。
術某・策謀・謀り事、だまし討ちもあったよ…マスターたちも冬木の御三家はじめ傭兵紛いの魔術使いやら連続殺人の本物のシリアルキラーなどなど…後になって当時のマスターたちの経歴を知って怖気を覚えたよ。よく生き残れたとね。」
 グレイの顔色が若干青くなった。そんな彼女をライネスは気のせいか若干愉しそうに見える。

「まぁ手段を目的のためなら選ばない魔術使いも、真性の殺人鬼《シリアルキラー》にも会いたくはないね、兄君。」
とライネスがしれっと茶化したが、その性格はもう少し控えめにしたほうが良いぞ。
「幸いというべきか自分もそんな殺人鬼には直接は会っていないよ。彼のサーヴァントが暴れて、それを抑えている間にセイバーのマスターが見つけ出して仕留めたんだ。
 …そちら《セイバーのマスター》にも直接会ってはいないが、セイバー《  剣 使 い        》には度々会ってやりあったり、ということもあったよ。」
「なるほどなるほど。その時の経験がトラウマになって、後々に第五次に参加すための備えとしてスカウトしに行った女の子に、会ったしょっぱなから顔を隠せとのたまうことになる、と。」
「いや、まぁそのことはまた別のことで…」
「おや、言い訳かな兄君?」
「むぅ…」

 このままだと話の流れがあやしいところに向かってしまうので遠坂嬢と従者の衛宮士郎の話に戻していく。
「第五次聖杯戦争の時、遠坂嬢と衛宮士郎はいわば同盟関係だったそうだ。それがきっかっけで師弟関係になっていったようだね。もともとは同じ学校の同級生だったそうだし、魔術抜きでの接点なら…以前からあったかもしれないな。」
「そうなんですか?」とグレイが反応し、
「なるほどね、そんな背景があるなら彼らの関係も理解しやすい」とライネス。
「若干の甘酸っぱさも感じてはいたが、遠坂嬢のスタンス自体が魔術師のとは若干違うんだな。」
 言葉を探すようにライネスは言葉を続けていく。
「遠坂嬢は冬木の御三家の一角だ。先代の時臣氏は第四次聖杯戦争で亡くなっているが幼い時に薫陶は受けている…ただその後は後見人だった聖堂教会の言峰綺礼の下、普通に学校にも通っているので魔術師の考え方より市井の考え方の方に馴染んでもいたのだろうね。」
 対してライネスは先代のエルメロイが亡くなった後、末席とは言え暗殺の危険もある世界に身を置く羽目になっていた。
 裏も表もある社交界での振る舞いを身につけざるを得なかった彼女からしてみれば対照的かもしれない。
「魔術師の理を理解したうえで、それには囚われない生き方をあの二人はしている。」
「ふむ、魔術師の世界では生き辛いかもしれないが、少年《衛宮士郎》のことに比べれば些細なことかもしれないな。」
「おや、さすがわが愛しの兄君。聖杯戦争の経験者はまるで理解できてるみたいじゃないかね?」
「解るわけないだろうが。」
軽く混ぜ返しながらライネスは続ける。
「立場上、彼《衛宮士郎》は遠坂嬢の従者だ。彼の聖杯戦争を生き抜いた秘密の秘匿にしろもっとマシな方法もあったかもしれないが…」
 もっともだとも思ったが…
「それは否定はしない。だがその時点での彼らには実行可能な手段が他になかったかもしれないな。」

 もしかするとここ《エルメロイ教室》にならあるのかもしれないな…

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2019-08-01 23:27:39 +0000