【夏闘乱2019】鹿乃寺 書人【東軍】

まよねず@鈍足
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「進級できるのなんて当たり前だ。これくらいできずに鹿乃寺の後継ぎにはなれないよ」
「成長する前のスランプとか、よくある話だ。それだけ、それだけの、はず」

「――っ、深水様!!」


■鹿乃寺 書人(かのでら ふみひと)

16歳 10月27日生まれ/166cm/男/
一人称/私(素だと俺)二人称/~殿、様、呼び捨て

成績優秀、技能優秀。パワーよりテクニックタイプ。
胡蝶結家の一人娘を主としている。「もう一人」の従者の少年には相変わらず苛立ちを向けてしまっている。
学校外では三人で共同生活中。家事全般担当。
進級前に実家に帰って以来、心剣の形状が安定しないため、一層苛立ちを募らせている。

■心剣:白鹿之雷(はくろくのいかずち)
使用者の意志によって雷撃を帯びる。
日本刀の形状を模していたのだが、苛立つ心の在り様を示すようにその形は不定形に。
雷撃の威力は衰えていないものの、コントロールがうまくいっていない。
また、刃の形状が整わないために、切れ味も落ちている。
刀本体のみが心剣で、鞘は鹿乃寺家に代々伝わる物。
心剣が安定しないため、ここのところは実体化を控え鞘に柄のみを納めている。

***

叫んだ先で蹲る主の姿に、鼓動の音はいっそう五月蠅さを増した。駆けている筈なのに、そう長い距離ではないはずなのに、主のいる場所がひどく遠かった。
近づいてみればより一層分かってしまう、その傷跡。剣を扱うその右腕が赤く染まり、長く伸ばされていた美しい髪は、無残にも斬り落とされて地面に散らばっていた。小さな口元から洩れる呼吸は、浅く早い。護れなかったという事実が確かに存在して、赤黒く視界から侵食する。
己の不甲斐なさに奥歯を噛みしめて、それから一瞬、もといた場所よりさらに遠い場所を見た。そこには主を振り返りもせず座り込んだ「もう一人」がいた。主を運ぶのに手を貸せと、そう呼びかけようとして、やめた。
きっと怪我も負ったのだろう、けれども動けないほどの怪我であろうか。学校行事程度で負う怪我などたかが知れている。それなのに「もう一人」はただ硬直して声もない。「従者」であるならば、真っ先に主を気に掛けるべきだろうに。 
動かない彼をそこに置いて、主を治療のための場所へと連れて行く。

ああ どうしてこうなったのか
なぜ あのとき 己の剣は 刀は
もう一人は どうして

めまぐるしく駆け回る後悔と共に、ただ願ったのは
夢であればよかった と

***


■関係者様
主:胡蝶結 深水 様【illust/74936215
 鹿乃寺家が代々仕えている家の、次代当主。憧れであり、護る対象であり、大切な「主」。
「安定しないのは深水様のせいではありません。俺 ――いえ、私の問題ですからお気になさらずに」
「私が至らないばかりに、怪我を負わせてしまって、申し訳ございませんでした」

「もう一人」:猪八重 萩玄さん【illust/74936006
 書人が深水様の「唯一」の従者になるはずだったのだが、なぜか書人より先に深水様に仕えていた「もう一人」。
「お前も関係ないって言ってるだろ! 相談する様なことなんかない」
「別にお前が前方で全部どうにかできるなんて思ってない。けど、自分の身を盾にしてでも護るべき主に、駆け寄ることもなく動けなかったお前なんて、俺は、従者とは認めない―!」

対戦者:六条 竜洞さん【illust/75288223
そもそも話し方や態度も癇に障る部類の相手。その上大切な主を傷つけた張本人ゆえに、姿を見るだけでも不愉快。
攻撃的な感情の根幹には、自身への苛立ちも含まれている。

 何事もなかったかのように挨拶をしてくる彼に、あのとき見た影が重なる。沸き上がる不快感に、ぎりと奥歯が鳴いた。
「この次は、ないからな」
 それは宣戦布告に見えて、その実願望を絞り出しただけの言葉。睨んだ先で、彼は嗤っていた。
 その顔は、あのとき見た己の影と同じだった。

■二枚目以降は原寸とか
■2018夏【illust/68853102
 2018冬【illust/72070271
■企画元様【illust/74041305
■不備などあればご連絡いただければ幸いです。

***
「書人」

久しぶりに対峙した父の声は、落ち着いていた。いつでもそうだ。組の内側のことは家族にすら漏らさず、どんな言動にも動揺などなく、どしりと構える山のようなヒトなのだ。
父の正面を手で示され、畳の上に腰を下す。真っ直ぐに見つめた先に、土色の瞳があった。

「お前だけでなかったのが、不満だと聞いた」
「――不満、というよりは」
「唯一性が失われたのが不快か?」

零した言葉に重ねるように、淀みない父の言葉が乗る。言葉にされてしまえばあまりにも幼稚な感情だ。それは自覚している。せめてもう一人が、父の様であったなら、あるいはご当主のようであったなら、もっと立派であったなら、今頃受け入れられていただろうと思う。

「お前のそれは 誰かと並べられたら失う程度の『唯一性』しかなかったと言うようなものだぞ」
「いえ 父上、彼と私とでは違うことは分かって」
「分かっているならば なぜいつまでもお前の主に気遣わせているのだ」

真っ直ぐ刺さる、父の言葉。知っている。もう一人を邪険にするたびに、彼に苛立つたびに、困ったような顔をする主のことを。知っている。もう一人だって、従者という立場に戸惑っていることを。

「己の至らなさを、他者に押し付けてはならんぞ書人」

知っている。自信のなさを隠すように喚いているだけの子どもが、自分だと、いうことを。

***

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2019-05-27 13:20:58 +0000