「お忍びで参りました。」
「もうお会いすることはないと思っていました。
あなたは何度私の命を救えば気がすむのですか?
皮肉ですね。ずいぶんと長い間地球にいるというのに、
見るのは移動中に小窓からのぞかせる空色だけだ。
私はおそらく永久にここから出ることはないのでしょう。
あるいは外に出るときは‥
お会いしたくはありませんでした。」
「アルドノアは地球と火星との共同資源となりました。
近々皇族でなくとも起動認証を行えるようになります。
そうなれば皇族の血族が絶対的な権力の中核であるという意味から
かつての象徴という意味合いに変わることになるでしょう。
遅かれ早かれ、私を含め呪われた因果は単なる過去の歴史として
認知される・・・つまりは隠れてあなたに会うことも
今後は難しくなくなるということです。」
「もうここには来ないでください。
死んだはずの戦犯との密会なんて知れたら」
「私の立場が危ぶまれる?」
「自分の命が危ないという意味です。」
「相変わらず嘘をつくのが下手ですね。
昔、空と海が青いのはなぜか教えてくれましたね。
空が青いのはレイリー散乱、
雲が白いのはミー散乱という現象だそうです。
私の大切な友達が教えてくれました。
‥けれど空と海がお互いの色を反射しているのも
本当のことなんだと思います。
火星も地球もお互いの見つめ合うことで
綺麗な青に染まる。
それを遮る雲もやがては晴れます。
あなたの雲が晴れるまで、他人を介さず、
自らの足であなたに会いに行きます。
色を照らし合わせられるように、これから何度でも。
あなたが私にしてくれたように。」
「・・・あなたは誰ですか?」
「私はアセイラム.ヴァース.アレイシア。
世界の平和を愛するものです。」
「・・・さようなら、アセイラム姫。」
2019-04-24 16:10:43 +0000