【ポケフロ0】secret

あると

「ふー……慣れない身体ってのは本気でしんどいや」

新しい軍服に着替え直し、チトセはごろんとベッドに寝転がる。

「チトセ、手首の調子どう!?あと喘息も!」
「どっちも落ち着いてるよ。ありがと、シロノワ」
「俺医者だから!ほら、今日の分のお薬!のめ!!」
「はいはい」

元の姿に戻って元気百倍と言わんばかりのシロノワにへらへら笑いながら対応する。
手首にはシロノワ特製の湿布がまかれており、痛みはずいぶん和らいできてる気がする。

「うっ!げほっ、がほっ……がぼっ!?ぜー、ぜーっ……」
「チトセ!?また喘息の発作が出たの!?」

不意に咳き込みえづき、口元に手を当てる。シロノワが慌てて飛び込んでくるととっさにその手をポケットにしまうといつもの軽い笑顔を浮かべる。

「げほっ、へーきへーき。最近調子いいくらいだから。シロノワのおかげかなー」
「そうなの?でも無理しちゃだめだからね!!ちゃんと俺がなおすの!!!」
「うん、よろしくね、ドクター」
「任せてよ!……ん?」

その時シロノワが見つけたのは真っ赤な一枚の花びらだった。

「チトセ、これどうしたの?」
「……んー?この間女の子に赤い花をもらったんだけど、萎れる前に押し花にしたんだよね。多分その時に一枚落ちたんじゃないかな?」

いつもの笑顔で返ってくるものだから安心し、花びらを拾い上げチトセに渡そうとした時、シロノワは気づいた。

ベッド一面に散らばる大量の赤い花びらと、わずかな青い花びら。

「……あ、みえちゃった?」
「チトセ……まさか……」
「8年前から発症して今もピンピンしてるあたりボクもしぶといよねー。……みんなには内緒だよ?」

からかうように上着を脱ぐと、彼が「大切な人が好きだった花」と話していた青い刺青が肩甲骨のあたりに刻まれている。しかしそれはよく見るとまぎれもない痣であり、この痣をシロノワは知っていた。

「なんで隠してたの!?」
「死ぬまで誰かを守るためさ」
「こんな末期になるまでどうやってみんなから隠して……」
「喘息ってことでごまかしてたからね。……ごめん、シロノワ」

死青病。体に青い花の痣が浮き上がり、青い花びらを苦痛とともに吐き出す奇病だ。そして、今チトセが吐き出したのは、死期を知らせる赤。

「どうして……」
「……お嬢様も家族もこの手で殺したんだ。コレに罹るには十分だと思うよ」
「治さなきゃ……」
「治せないよ。死に別れてるんだ。それにボクは剣。折れるその時まで役割を全うするのが喜びなんだよ」

そう言うチトセの笑顔はいつもの軽く適当なものではなく、誠実さを感じる綺麗な笑顔だった。



チトセが死青病(illust/73889146)末期であることが判明しました。彼は基本的にこの病気を喘息ということにしてごまかし、変わらず前線へ向かいます。原因は大切な人と死に別れたこと。8年前、病を止めるため、すでに感染した医者とともに屋敷と村を焼き払い、唯一感染することなく生き延びたものの、別の病魔が彼を蝕んでいました。

お借りしました
シロノワくん(illust/72236948

チトセ(illust/72241104

#Pokémon Frontier#【ポケフロ0:交流】#【黄昏の灯台】

2019-04-09 13:27:34 +0000