燕尾星幽界を旅する中で人形の心には、布告者の一人である獣人＜ゾディアック＞の少年、スプラートに対する一つの感情が育ち初めていた。魔物に果敢に挑みかかる姿、他者を常に気遣う振る舞い、そして荒ぶる聖女の内より自分を救ってくれた。
聖女の内にあった間、この感情がなんであるのかを考え、布告者の誰かに教わった一つの概念にたどり着いた。これは異性間に於ける「恋」というものであると。
でも、スプラートの記憶を読み取った人形は知っている。彼は一度世界を移動させられ、そのときに性別が逆転していることを。聖女から救い出され、道が一つ示された。地上への復活である。
………
復活を遂げた彼女は、今日もその猛き力を振るって模擬戦を勝ち抜き、こちらに笑顔で駆け寄って来る。人形の目にはその顔が、共に旅したときと同じように眩しく映りこむ。
「貴方は少女のようになってしまったけれど、私に芽生えたこの気持ちは………」
これは存在したかもしれない可能性の一つ。
－了ー
2019-04-03 15:41:58 +0000