余は知っている。
誰もがガナを恐れている。
いくら我々が、皆に交友的にしようとも、
自身より巨大な相手にですら統率された群れで対抗できるガナを恐れている。
余は判っている。
見るその瞳は皆、“恐れの色”を持っている。
それがとても悲しかった。
何か言いたげにして、目を合わせれば噤まれる。
恐れぬといえば、何も知らぬ子供くらいだ。
しかしそれだけでは駄目だ。
いずれは恐れを知ってしまう。
故に、余は寂しかった。
辛かった。
同等と呼べるものが欲しかった。
だが、ある時にそれを覆す者がいた。
只その者は余を我々を滅ぼそうとした。
故に同胞を、親を殺した憎さはある。
だが、それ以外の感情もある。
余もそれがよく解らなかった、
おかしいかもしれぬとも思った。
嗚呼、“凍てる瞳”...
余が雪解けの最果てに行く前にもう一度見たい。
あの決意の色をした月のように美しき眼を見ていたい...
嗚呼、汝(なれ)を恨もう...
対等にさせてくれぬ汝を恨もう...
余はこの思いを内に抱えたまま雪解けの最果てへ還る...
ハイガル山の主ガネイシア=インドゥーラ、レッドヴァル郊外にて戦没。
登場人物(敬称略)
巨砦兵フォートゴーレム【illust/73876297】
ガネイシア【illust/73875234】
2019-03-30 11:57:51 +0000