まくら④(浅草ジョイジョイカムカムホールにて)

玉本秋人

浅草寺(せんそうじ)付近で、白髪でシワシワで杖をついた、羽根つき帽子の怪しげなおじいさんに出くわしまして。「ご存知!浅草名物、絵葉書クイズおじさんだよ!」
言葉の力は恐ろしいものですね、見たことも聞いた事も無くても、「ご存知!」とか「名物!」などと言われると、知らないこちらが悪いような気がしてきます。後で伺ったら町会の元役員だった人で、最近始めた趣味だそうですね。
浅草寺や五重塔、雷門などを自分で描いた絵葉書を作ってたが、浅草区域内の「ココどこだよ!」という所を描いて、それをクイズにしたら面白いんじゃないかという事で頂きましたのが、右側に桜の木、左に赤い門と「伝」の文字の絵葉書。初心者向けという事で、確かにこれは簡単でございましたね。
伝法院(でんぽういん)通りの入り口の門、右手に桜の木ですから浅草公会堂のある方ではなく、仲見世(なかみせ)がある方の門ですね。絵葉書片手に行って参りました。場所についたらおじさんが先回り、正直に言いますと、浅草寺から仲見世は目の前ですから、杖をつきながらフラフラと歩いて行ったおじさんが、遠くで待機しているのがスタート地点から見えてましたので、まああそこが正解の場所なんだろうなと思っておりました。
「ココが正解ですか?」「正解!簡単過ぎたかなあ、ご褒美にその絵葉書あげるよ!」「わからなかったら絵葉書はどうするつもりだったんですか?」「どうもしないよ?趣味でやってるだけだから!」「気前がいいんですね、おじいさん」「照れるなあ、おじさんね」あっ、ごめんなさい!と言ったら、「気にしないでいいよ!でも、おじいさんになるまでにはまだまだ先だからね!」
年齢を伺ったところ、「82歳」とおっしゃってました。おじさんからおじいさんになるまで、あと何年かかるんでしょうかね・・・。

・・・・・・久保田万太郎(くぼた まんたろう)『浅草風土記』の、抜き読みでございます。
「「古い浅草」とか「新しい浅草」とか、「いままでの浅草」とか「これからの浅草」とか、いままでわたしのいって来たそれらのいいかたは、畢竟(ひっきょう)この芥川氏の「第一および第三の浅草」と「第二の浅草」とにかえりつくのである。改めてわたしはいうだろう、花川戸、山の宿、瓦町から今戸、橋場・・・「隅田川」のながれに沿ったそれらの町々・・・。(了)

#舞波千景#講釈#講談#浅草名物絵葉書クイズおじさん

2019-03-29 04:01:19 +0000