『ヨークトャル船団』 【illust/73009955】から
ボトヴィッドさん【illust/73537853】
ヤールさん【illust/73363751】をお借りいたしました。
キャラの性格、考え方や口調間違ってたらごめんなさい。
↓以下、あらすじポエム
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ノーザリアの手に堕ちたテイル島からの撤退し、
嵐の傭兵団は海路でエルダーグランへ向かっていた。
ダイクンはその道中、横切ったとある「敵」と視線を交わした。
それはグレイベアの戦いでも剣を交えたヨークトャル船団であった。
武器に手をかけたが、それを投げつける事はなかった。
故郷を再度追われた皆に、これ以上の戦いを強いる事はあまりにも酷であった。
まずはエルダーグランへ戻り、体制を立て直す必要がある。
もはやラスト大陸西方の海は、西方の拠点テイルを手中に収めたノーザリア帝国、
そしてヨークトャル船団の思うがままになっていると聞いていた。
甲板に立っていた濃灰色の髪を目に垂らした男【illust/73537853】は
ダイクンの姿を視界に入ると、低い声でつぶやいた。
「ふん、あの男、グレイベアではお頭とイェオリが随分世話になった
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ようだが、王の剣にでもなったつもりか。もっとも、隣に居るのはもはや王にはなれん男のようだが。」
「もともと近衛の者だったようです。名は…ダイクンと言いましたか」
「ボトヴィッドさん、あいつら潰しておかなくて良いので?」
下っ端や中堅と思われる男たちが、ボトヴィッドに話しかけた。
ボトヴィッドは得意げに腕を組んで見せるとこう続けて言った。
「テイルという地は奪った。ノーザリアは炎神の地ってゆーでっけえお宝を手に入れたのよ。
土地ってえのは、何もにも代えがたい。そこに住む女も居るしな。そこからこれ以上何を奪う必要がある?
もっとももっとでけえお宝が本土にあるからよ。俺らはそっちを見ようぜ。」
元テイル王国の王子イーサンについてエルダーグランへ向かうその男を見送る先にあったのは、
ファイアランドの首都侵攻というミッションだった。
それはもはや海賊団ひとつのありふれた野望ではなかった。
「まあ、いつか戦ってみてえな、イーサンを生かした男…」
「しかし、逃がしておけば、いつ歯向かってくるか…」
そう思わず反論した船乗りの男に、
いつの間にか横にたたずんでいた老人【illust/73363751】が口を開いた。
「それはエルダーグランという存在が証明しておるじゃろ。あやつらが国になった時、
わしらだけでは動かせないものが出来上がる。
それに、奪うもんがなくなってしまうのはつまらねえもんだわい、ヒヒヒ」
「じいさん体が冷えるぜ。年寄りが無理すんなって。
まあ、大陸がどいつのもんになろうと、俺らはやりたいようにやるだけさ。
王の剣になるなんざ、ごめんだね。」
ボトヴィッドはそう言うと楽しそうに口角をあげて微笑んだ。
一方、こちらを見てなぜか微笑んでいる男を見やり、
怪訝な表情のダイクンであったが、
どうやら相手が攻撃してくる様子は無いと思えると、同じように腕組みをして見せた。
今やノーザリアとなったテイル島に残った妹やディランの存在がダイクンの心境をより複雑なものにしていた。
そんな事を考えていたダイクンであったが、その気持ちを見透かすようにイーサンが話しかけてきた。
「ダイクン、お前はこの先の戦いが使命だと思っているか?」
イーサンはダイクンの前に立ち、じっと目をのぞき込んできた。
「お前はどうしたい?」
「私が迷っている事をお見通しのようで…」
「俺も、迷っている。迷っているが、こうしたいと思う気持ちはある。
ダイクン、お前には長い間、苦労をかけた。…お前は、どこで死ぬべきか考えているのか?」
イーサンは涙ぐみ目を伏せたダイクンを見つめたまま続けた。
「初めて会ったのは、いつだったかな…」
ダイクンはイーサンがいち近衛兵だった自分に握手を求めてきた、あの日の事を思い出していた。
すっかり登り切った朝日を眺めながら、イーサンは顔を引き締め直した。
「俺はディランを信じている。もう心配などしていない。
あいつならどんな形であれ、立ち上がってくれるはずだ。
なら、俺らは俺らの今を生きるだけだろ?」
イーサンはこちらを振り向き、歯を見せて笑った。
ああ、私は何をうぬぼれていたのか、
私がこの人を生かしたのではない…
救ったのではない…この人が私を照らしてくれたのだ…
人に頼ることを嫌っていた心はふっとほどけ、
そのまま膝から崩れ落ちたダイクンをイーサンは受け止めた。
「疲れが出たか…今は少し休め。エルダーグランに戻ったら、俺はギデオンに会う」
「申し訳ありません。今はこのような時ではないのに…」
「良い。ここに居るのはお前だけではない。仲間が居るだろう。まだ皆生きているだろう?」
ダイクンの周りには心配してかけつけてきた嵐の傭兵団が居た。
イーサンは救護班に「ダイクンを頼む」と指示しているようだった。
ダイクンは朦朧とながらも、ギデオンに会うというイーサンの言葉の意味を理解した。
ディランの剣となったイーサン、それら兄弟を支え見ていたいという
今まさに叶わなくなろうとしている自分の欲望を、ダイクンは今改めて自覚していた。
そして同時に、イーサンの決断を否定する気持ちはもう、沸いてこなかった。
数日の後、イーサンはギデオンの前に跪き言った。
「ギデオン…私が、お前の剣になろう」
2019-03-23 15:33:49 +0000