同じ道を征こう その先に夢があるなら 滅びの道は彩られるだろう 君の言葉が最期の手向けだ
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輩よ お前たちの輝きは 随分と私を酔わせた
いくつもの滅びを手向けに私は眠りにつくだろう
友の命を救えたのならば、約束を果たせた悔いはない
この先に友の繁栄を祈る
「びぃびぃ、なんでこんなところに、いるの? ここはコウモリ族だけの、ひみつの場所なのに」
谷間で首を切られなかったのはラーラがくれた、輝く蜜のおかげだったのかもしれないな
そうだ、これをルーセットへ渡さないとここで首をきられてしまう。
切るのはいいが、薄い皮の血袋のお前達とちがって、手間がかかるだろうし
もうすぐ消えるから、待ってくれと言うべきだろうか。
「なにこれ? おみやげ?」
ルーセット
お前が挿し木をしてくれて
種や苗を、多くの友に託してくれたのを話してくれた
御礼というものに、これは相応しいだろうか
コウモリ族はいつも美味しそうに、果実の蜜をなめていたものだ
「ブライトベリーの種を撒いてくれた人にもあげて欲しい?」
わたしはここで、ずっと聞いていた。
その若木は私と同じように何千年の時を経ねば、精霊としての力は伴わないだろうが
それでも、最後まで寄り添いたいと願ったヒトの手で、か細くも生きていけるならば
ブライトベリーという存在は、新しい種になる力を得るだろう
「友達に会いに行っていたんじゃないの? なんで光っているのさ、なんで消えようとしているのさ、よく分からない、よく分からないよ待ってよ。君は、ブライトベリーの精霊だったの?」
あぁ、私は、君のお店のバーテンダーだった
本当に短い間、私は人が見るような『夢』をみれた
「まだお給料払ってないよ!制服だってそんなにしちゃって、どうするんだよ!もう、もう!」
こういうのを、何というのだったかな
「え? なに? …、………、……? 」
ニグラス、君が谷間で旗印のギデオンという男へ
眼差しを投げて言った言葉が相応しいだろうか
『希望というもの』
私の最期の道に
「僕は、君が大好きなんだよ!? 僕は君が────」
見送りをありがとう
雷鳴がルーセットの眼前に落ち、ブライトベリーの古木が真っ二つに割れて燃え出した。
ルーセットは燃える古木と消えた老人の姿の前で茫然としていたが、火が広がり出すと取り憑かれたように実を採取しだした。
指が切れるのも構わずに枝を折り、友達のゴーストに渡すを繰り返した。
火が迫って髪を焼き、羽を焦がし、頬には煤がはりつく。
実を引きちぎり、川へ投げる。その実がどこぞへ流れ着き、そこで発芽する可能性に賭けた。
ゴーストたちが蓄えられる限界がくると、持てる限りを脇に抱え、ポケットにも、口いっぱいに実をつめた。
戦場から逃げてここまでくる間にぼろぼろになったポケットは穴があいていて、火を避けながら森を走るルーセットから、涙のようにピンクの実が零れて落ちる。
ルーセットは何度も振り返りながらも、走るのを止めなかった。
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ルーセットがもらった輝く蜜
【illust/73649139】
⊿ブライトベリー (三章時終了系列をもって消滅)
【illust/73326715】
⊿バーメイドのルーセット
【illust/72939760】
2019-03-19 09:38:09 +0000