テイルのとある老兵が言った。
「ディラン様は本当に大丈夫であろうか」
「やめておけよ。公爵殺しの疑いで追放されたイーサン様の二の舞になるぞ」
近衛兵たちはみな口々に王に祭り上げられた弟王子の事を口にした。
長きに渡りレイン家に使えてきた近衛兵たちには、前の戦で英雄とまで言われた兄王子が公爵殺しをするとはにわかに信じられなかった。
偉大すぎる兄の代わりに王となった弟王子。
レイン家の当主となったディランは老兵の目からみてもどこかいじけてみえた。
「せめてエゼル王のように若くとも頭角を現してくれれば…」
若くしてファイアランドの王位を継いだエゼル王…五王国を率いる盟主として信頼を集める彼を見るディランの目には嫉妬の色が隠せなかった。
ホースヒル 敗戦の後
テイルの老兵はある光景を見た。
ローレルランドの女王が倒れた。
かつてテイルの英雄と謳われたイーサン王子の姿がそこにあった。
そして…老兵が仕える弟王子が変わる瞬間を。
兄の背を追い続けた少年が、その背を追うのをやめた瞬間を。
それは1人の王が生まれる瞬間であった。
老兵が仕えそして命を賭す王がそこに立っていたのだ。
戦場の敗者に雨は降り注ぐ。
されど雨は島国であるテイルにもたらされる天の恵みだ。
雷鳴が、1人、また1人と増える雄叫びが、王の誕生を称える。
この王に向ける矢があれば、我々が盾となろう。
この王が剣を握るなら、我々もまたその剣となろう。
ディラン王の名のもとに、我らテイルの近衛は命を懸ける。
その赤き旗のもとに集うため。
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二章ラストがたまらんかったのでその時のディランとイーサン漫画です。
定番な感じなんで同ネタ多数と思いますがIFの精神で!!!!!!
弟が!兄を追い越す瞬間が!!大好物なんだ!!!!!!!!!!
イーサンにごめんねごめんねしながらイーサンの漫画も描きたいです…
2019-03-09 16:06:36 +0000