【PFLS】機関室の夜

繰屋@企画用

「できることなんて、最初からこれしかねえんだ。それなら今は」



蒼天を切り裂いて一直線に落ちてくる雷光。
暴風が直角にその軌道を変え、巨大な光は船から逸れて地上へと突き刺さった。
まるで現実味がない、いっそのこと英雄譚じみた光景。

けれど、それが生み出したのは血と泥にまみれた風景だった。
無数のうめき声と生き物が焼け焦げる嫌な匂いが、えぐられた大地に充満している。
新入りが持ち込んだ回復結晶はあっという間に底をつき、後は――。
あの日だけで、いったい何人を見送っただろう。数えるのはとっくに諦めた。

この船に乗ると決めたときは、あんな光景、想像しなかった。
軍に協力する、という指針が出た日だってそうだ。当然のように残ると決めた。
当たり前だ。あんなに憧れた竜の船。幼心に焼き付いた英雄。せっかく手に入れた居場所。

だけど、迷わなかったのは知らなかったからだ。
知っていても、解ってはいなかったからだ。

牙も爪も魔法もない、励ましの言葉さえ上手く出てこない、ただ少しばかり”目がいい”だけの、人間に、あんな災厄みたいな場所で、一体何ができるだろう。

視界の端を違和感がちらりとかすめた。
動力炉の窓から漏れる魔鉱石の柔らかな光。
そこに潜む小さなゆらぎは、おそらく内部の微細なひび割れだ。

稼動術式解除の式、それを打ち込む動作は指が覚えている。
灯りの落ちた石を取り外して、調整しておいた予備に差し替えると、今度はさっきよりもほんの僅かに明るく、金色の光が灯った。

レンズを通して見たところで、他の誰にも分からないくらいその差は微妙だ。
けれど、それが勘違いでないことは経験に裏打ちされている。

きっとこれからも、飽きるくらいにあんな光景が繰り返されるだろう。
きっとそのたびに、何度も自分に問い直すだろう。
それでも、今できることは、これしかない。

役目を終えた石が急速にぬくもりを失っていく。
その温度を手のひらで追いながら、ふうっと吐いた息の音は、機関室の暗がりに吸われて消えた。
 
 

 
非戦闘員はだれでも、一度は悩むよねえ。

 
時系列的にはキューさんの強襲【illust/73463595】【illust/73495190】とライラさんの癒やしの魔法【illust/73532745】の直後くらいです。
動力炉内部の様子は100%捏造。
お借りした皆様の行動を制限する意図はございません。
パラレル&スルーでお願いいたします!
 

 

お借りしました!
ジンさん【illust/72937885】:風繰りの風ってすごいんですよホント。
グレイさん【illust/73037403】:頼れる代表。このときは地上の被害に激おこ。
ライラさん【illust/73239140】:「癒しの花(フラワーエイド)」すごくきれいな魔法です。
キューさん【illust/72937903】:めちゃくちゃかっこいいけど実はキューちゃんだった……!【illust/73517666
黒翠竜のクリュさん【illust/73187075】:ほんとは降下のときはキューさん乗ってなかったけど、出てきてほしかったんです。パラレル……!

 
 
若干真面目がすぎる非戦闘員【illust/73152479

 
 
pixivファンタジア Last Saga 企画目録【illust/72934234

#pixiv Fantasia: Last Saga#Fireland#The Battle of Dawn【red】#◆ドラクボーン#pixiv Fantasia group picture#【嵐の傭兵団】

2019-03-09 02:41:26 +0000