「あの日の出来事は決して忘れない。私の心に火が灯された、あの日のことを。」
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イータ・ハーシェリーヌ(17)
豪商ハーシェリーヌ家の一人娘。
数年前に事故に巻き込まれ、母を亡くし自身も足を負傷し歩けなくなった。
元々の引っ込み思案な性格もあってか、母を失った悲しみで事故の後は完全にふさぎ込み、見かねた父によりヨークモエル村にて療養させられていた。
事故の傷は完治したとされているが、依然歩くことが叶わなかった日々が続いた。
ヨークモエル村の大火事の日。
うたた寝から目を覚ました時に目に入ったのは自室の扉から漏れる煙。
そして、外から聞こえるただならない喧騒に窓から顔を覗かせた時、彼女は全てを察した。
徐々に燃え始める扉を認め、迫り上がる恐怖にとっさに窓から飛び降りた。
そして立ち上がり、たどたどしい足取りで歩き、やがて走り出した。
事故の日から歩みを止めていた足で、靴も履かぬまま、周りに目もくれず走った。
全身を襲う痛みと疲れもとうに限界のはずだったが、彼女は走って走って、走り続けた。
大切だった母の形見がするりと首から離れた事に気づいたときも。足を止めることはなかった。
ただただ、走らなければ死ぬ、それだけが彼女の心を突き動かした。
やがてたどり着いた近隣の村の入り口で、彼女はようやく力尽き崩れ落ち、そのまま寝込み続けた。
数日後、救援のため人手を借りて村に戻った時は、その惨状に呆然とするしかなかった。
だが、療養中に度々家に訪ねてきてくれた村長代理や小さな子どもたちや村民たちの心遣いに、彼女は満足に対応できずにいた事を思い出し、そんな彼らもあの時その場に居たのに、自分だけが生きるためにと見て見ぬふりをしていたことを悔いた。
だが、ここで立ち止まっては何もならない、何よりこの村の皆に報いる事をできれば、と、その後もヨークモエル村に留まり続け、父に村の復興の援助を請い、村の再建に尽力した。
(なお父はコハク酒をたいそう気に入っており、一人娘が立ち直った事の喜びと滅多にない我儘を奮ってくれた事により二つ返事で了承した)
今までの彼女を知るものは、きびきびと働き人々への気遣いを忘れず話しかける姿に戸惑いつつも、活力を与えられたという。
窓の外から見えた、幸せな日々がまたやってくることを信じて。
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生き地獄でもよかったんですが、生き残って希望を見出したらいいなと思った。
復興時にはちゃんと立ち上がれてるけど、やっぱりちょっとふらついたり杖付いたりするかもしれない。
今一番ホットなヨークモエル村【illust/73282195】
→ニューヨーク村【illust/73504175】の復興支援をします。
★PFLS企画目録【illust/72934234】 pixiv公式サイト【https://www.pixiv.net/special/pfls/?ref=member_illust】
2019-03-03 08:24:18 +0000