とある原住民視点のお話。
この後ちぃるは船に到着し、比較的安全そうな所をメインにカミサマを探しています。元凶がカミサマである事を知らないから。
ちぃるのその後は公式の発表を見てから考えます。
お借りしました。
ナルさん【illust/73367683】
穏やかじゃない状況ではダラダラどころではなかった少年【illust/73106933】
末尾が偶数ならボウケン者支援タグ、末尾が奇数ならナラズ者支援タグをつけます。
末尾ID【3】
___________________
「だるぅ…ねむぅ……」
僕にお礼を言ってくれた大人が去ってから少し時間が経った。
その後もちらほらと島の外からの来訪者が通りかかり、その度に最低限のもてなしとしてきのみが入った袋を渡しては案内をした。最初の大人のように礼を言って受け取ってくれる者もいれば、当然のように袋をぶんどって立ち去る者もいた。しかし、ちぃるとしては最低限のもてなしだけでさっさと立ち去ってくれるなら不愛想な態度の来訪者でも問題はなかった。
「ここらでおやつでも食べようかなぁ」
小腹が空いてきた。ちょうど余ったヒメリの実が一つある。
首の膨らみの一つからにょきりと蔓を伸ばすと隣にある大きめの草むらをガサゴソと漁る。蔓が目当てのものに触れたのを確認すると、巻きつけてガサリと音を立たせて引き抜く。
「あったあった」
袋から目当てのものを取り出すと口に近づける。
「いただきまぁ」
ヒメリの実を口に含むと同時に、ポツポツと雫が落ちる音と共に何かが溶けるような音が重なって聞こえてくる。
天を仰ぐと薄紫色の液体が雨のように降り注いでくる。
あまりの不気味な色の雨に驚いて声を上げようとした拍子にヒメリの実を飲み込んでしまう。殆ど噛まずに飲み込んでしまったせいで喉につっかえたように苦しい。雨宿り出来るところを探さないと、と動こうとすると同時にむせ返るような酷い悪臭が漂ってくる。
紫色の雨粒が当たった葉が、草が、木がじわりじわりと崩れていく。鮮やかな黄緑が紫に染まったと思えばやがて黒に近づいていく。
「なに…ぇっ……」
ぽつりぽつり。僕の頭の葉にかかっていく。毒液が掛かった時の痛みと気持ち悪さとは別に、寒気が身体の表面をベタベタと触ってくる。
「か、カミサマ……」
考えるより先に感じた。ダラダラとしている場合じゃない、と。
ちぃるは毒液を振り払うように身体を振る。『しんぴのまもり』を自分に掛けると、とっとこと走り出した。いくつもの来訪者達を案内したお船の方向に。
何処か遠くで叫び声が、泣き声が聞こえる。船の方向から雷が落ちている。毒液とは違う気持ち悪い臭いがする。
カミサマならみんなを助けてくれる方法を知っているかもしれない。お船に行けば、カミサマにお伝えできるかもしれない。
どんどん走っていく。何処をみても草も木も花も毒液にやられて紫に黒に染まって枯れていた。
草の力で出来た身体は『しんぴのまもり』を掛けていても、雨のように降り止まない毒液が身体にかかる度にじわりじわりと痛みが響いた。
もうすぐお船に着く。それなのに毒のせいで身体が重くて動かしにくい。
あと少し、あと少し。
その時だった。
冷たい液体が纏まってバシャリと身体中に掛かる。
毒液でも掛かったのかと反射的に閉じていた目をうっすら開ける。毒液によって黒紫に染まった身体ではなく、いつもの身体に近い黄緑の身体だった。染み込んだのか掛かった毒液が洗い流されていた。同時に痛みの響きが先ほどよりかなり和らいだ。
ふと水が飛んできた方向を見ると、黄色い身体に腰巻をまいた島民がトテトテ走り去る後ろ姿が見えた。
「……ありがとぉ、あんたも早くお船に行きなぁー!」
『みずびたし』をかけた島民に向かって礼を言うと、ちぃるはもうすぐたどり着くであろうお船ーー捨てられ船に向かってまた走り出した。
2019-03-02 09:29:15 +0000