精霊王の行軍に従い後方支援に当たっていたエトスは、グレイベア城の方角でベアステイルの船から青い炎が上がっているのに気付いた。
あれは友軍のものだろうか。それとも敵襲で?
攻城の前線に立てるだけの強大な力のない事を、少し悔しく思う。
「けれど、私も為すべき事を為さねば。」
彼らの手を煩わせぬよう、多少なりの追い風になるよう。この身で戦える相手ならば、何人何匹でも。
弓をいっぱいまで引き絞ったまさにその時、不意に塗りかえられてゆく景色を見て、思わず体を引きつらせた。
そのまま手を離れてしまった矢の行き先を目で追い、貴重な物資が無駄にならなかったのを確認し。そして息をのむ。
先程までの凍土が、故郷を思い出すような草木で覆われてゆく。幻覚であろうかと
目を瞬かせた彼だったが、矢を受け倒れた兵はそのまま、深緑に埋もれようとしていた。
「精霊の……」思わず口をついて出る。
土木に在る精霊の力を借り、植物を生やしたり生育を促したりするのはそう珍しい事ではない。
ここまで大規模なものを見た事はないが、王やそのそばで戦う者達なら、あるいは。
ふと自分の言葉を思い出し、先程よりも静かな心地で弓をつがえる。確かに精霊族よりも逞しい体つきをした兵士の、鎧の隙間を突くようにまた矢を放つ。
「手負いの獣は強く噛むと言います…。エリオン様、皆…どうかご無事で。」
多くの同胞が抱えているだろう思いに重ねるよう、静かに呟いた。
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後半戦でようやっとログイン!グレイベア城から少し離れた所で戦闘に参加しています。
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いのち(illust/72940905)
名前だけで恐縮です…! 黒梯騎士団ベアステイル(illust/72939380)
■エトス(illust/73112447)
2019-02-24 15:20:05 +0000