技術は自然環境に働きかけて社会を豊かにし、
政策は社会環境に働きかけて社会を健全に保つという、
文明から環境への働きかけを描いた図です。
初めて社会環境という言葉を使ったのが社会学だったそうなので、
この名前をつけました。
図2の歴史学的説明図では、各要素の長期的かつ全体的な、
現象面での変化の流れを示しましたが、
この図では、各要素間の|時々刻々《リアルタイム》で個別的な、
実体面での個別的な働きかけ合い、相互作用を示しています。
経済・社会活動を人間の身体、自然・社会環境を働きかけの客体として、
技術を右手、政策を左手とみると、
その実現に必要な物的資源が右ひじ、人的資源が左ひじに当たり、
|印象《イメージ》として分りやすいかもしれません。
この図の重要な点は、3つあります。
第一に、技術と政策は、文明を支える二本柱です。
文明活動の本体は、全ての人々が営む経済・社会活動ですが、
それを豊かにするために専門分業化したのが科学・技術、
健全に保つために専門分業化したのが制度・政策であるといえましょう。
第二に、この図では、技術は自然環境に働きかけ、
政策は社会環境に働きかける、という面を重視しています。
組織技術のように社会を対象とし、政策を助ける
社会科学的な技術は、その例外といえます。
しかしそれは、『ああすればああなる』という一定の法則に従う、
人々の〝内なる自然〟を対象とした技術であるともいえます。
他方で環境政策など、技術的な政策は、
自然環境を対象とするようにも見えます。
しかし政策の対象はあくまでも、社会環境としての人々であり、
自然環境を対象とするのはそこで用いられる環境技術といえます。
ここでいう自然環境と社会環境の違いは、主体性の有無です。
自然環境である土地や動植物は常に、
『こうしよう』という一方的な働きかけの客体ですが、
社会環境としての人々は多くの場合、
『どうすべきか』を一緒に考えて決める主体にもなりうるし、
またそこには政策主体自身も含まれ得る、という違いがあります。
第三に、環境とは技術や政策の対象であると共に、
以後の活動の基礎となる全ての物事の総称でもあります。
自然環境とは、地形、気候や天然資源などです。
それに対して社会環境とは、
周辺文明との関係や先行文明から引き継いだ文化、
さらにはそれまでの自文明の活動全ても含まれます。
ここで、政策の対象である社会環境には、
今までに自分達がしてきたこと全ても含まれるとなると、
政策はそれを変えていく自己制御である、ともいえます。
このことは次の図4〝生物学的説明図〟の考え方につながります。
2019-01-03 07:48:17 +0000