「苏修必敗!捷克斯洛伐克人民必胜!(蘇修必敗!捷克斯洛伐克人民必勝!)」
Soviet revisionism must be defeated! Czechoslovak peolpe must win!(1968)
(ソ連修正主義は必ず敗北する!チェコスロバキア人民は必ず勝利する!)
まだ未完成ですが、去年からだらだらと加筆していて、うかうかすると事件50周年の節目の年も越しかねないんで、見切り発車的にアップします。
illust/64125642、illust/64168074 と同様、1968年のチェコスロバキア介入事件に架空戦記の設定を加えた世界観に基づくものですが、前2作がチェコ国内あるいは西側メディアに掲載された風刺漫画という設定であったのに対し、今回は抵抗運動への支援の姿勢を明確にした中国で、侵攻(1968年8月20日)から遠くない時期に描かれたプロパガンダアートという設定です。
プラハ市街地での市民の抵抗を伝える写真や映像をもとにしながらも、構図やキャッチコピーは、同時期の中国で制作されていた、インドシナ連帯をはじめとする「反帝・反植民地運動」ポスターのテイストが感じられます。
*参考① https://chineseposters.net/themes/indochina
参考② https://chineseposters.net/themes/liberation-movements
また実際の情景をもとにしながらも、当時の中国の立場を反映したいくつかのアレンジがなされていて、それらを記号として読み解いていくのも興味深いものです。以下列挙すると、
①当時のチェコスロバキア、特に若年層の間では、ジーンズ、男性の長髪、女性のミニスカートなどの西側風ファッションもかなり入っていましたが、文革の真っ最中でもあった中国ではそのあたりは抑え目に描かれ、全体として青少年は、中国との決裂前のソ連の若者くらいの服装になっています。
②チェコ国内にも毛沢東主義のセクトがなかったわけではなかったでしょうが、抵抗運動の最中に、プラハ中心部の建物に巨大な毛沢東の肖像を掲げるほどの勢力ではなかったでしょう。これは多分に、中国国内向けのメッセージ(ヨーロッパでも修正主義に反対する動きが高まっていて、毛主席はその導きの星である)と思われます。
③プラハの民衆は国旗とともに赤旗、また介入に反対の立場をとり中国にも友好的なアルバニア、ルーマニアの旗も掲げています。ユーゴスラビアも介入にいち早く反対しましたが、中国は当初介入を「反修正主義」の立場から批判していて(ユーゴはその「修正主義の最たるもの」という位置づけ)、実際ユーゴとの関係もまだ修復されていたなかったので、同国の旗は描かれていません。
④「ソ連のチェコ侵略はアメリカのベトナム侵略と同質」という主張を反映して、南ベトナム解放戦線の旗も見えます。ただ北ベトナム国旗は、同国がソ連に近い立場をとったことに配慮したのでしょう、描かれていません。
⑤ソ連軍の将兵に銃を突きつけているのは、一般市民・労働者、あるいは民兵とみられる2名の男性で、うち若い男性は模範的な共産主義者(反修正主義者?)の描かれ方をし、また年配の男性は、第二次大戦のレジスタンスの経験者であることが示唆されています。正規軍(チェコスロバキア人民軍)の将兵が描かれていないこところには、抵抗は支援するもののドゥプチェク指導部に対する評価は微妙な中国の立場が反映しているのかもしれません。
⑥戦車への落書き(当時戦車や建物の壁に盛んに書かれたもの)は、実際には「☆=卍」または「(ハンマーと鎌)=卍」(実際は「左卍」)でしたが、星や「ハンマーと鎌」はソ連だけでなく共産主義そのもののシンボルでもあるため、「=卍」の部分のみが描かれています。同じ理由でしょう、ソ連将兵の帽章・ヘルメットの「赤い星」も省略されています。
2018-10-05 08:51:53 +0000