失ったモノと、得られたモノ

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頭が吹っ飛んだ!
そう、思う程の血しぶきを上げて、ゾロはミホークの斬撃を顔面で受けた。
意外な状況にミホークは一瞬呆気に取られた。
「い、嫌ー!!!ロロノアーッ!!!」
半狂乱になって取り乱すペローナ。
その頰を叩いて気を取り戻させる。
「しっかりしろ!お前が取り乱してどうなる!城にロロノアを運ぶ。
有りったけの包帯とタオルを用意して置け!」
うんうんと頷き涙を流しながら城に向かうペローナ。
目を向けると、左目から夥しい出血をし気を失っている、ゾロ。
抱き抱えながら「何故避けん・・・」と、呟く。

前日、稽古の終わり間際にペローナが顔を出した。
真剣での乱取り。
(コイツらよく死なねーな・・・)
そう思って眺める二人の立会いはペローナから見ても凄まじい物であった。
ミホークも以前の様な余裕と言うか手加減が出来ないレベルまで、ゾロの腕が上がっている事を実感している。
(コイツよくぞココまで・・・)そう思った瞬間、キレの良い一撃が身をかすめた。

二人の動きが止まる。
「?なんだ?終わったのか?」
よく分からないと言った感じでペローナが声を掛ける。
刀を収めて一礼する二人。
「相変わらず今日もボロボロじゃねーか。よくも飽きずき負け続けられるな。」
皮肉っぽく声をかけるペローナにミホークが言う。
「いや、最後の一撃は良かった。」
そう言って服の袖を見せる。
「はぁ?破れているじゃねーか・・・」
「そうだ。最後の一本はロロノアの勝ちだ。」
「え!?」
何の事か理解できずゾロを見る。
ニヤリと笑みを返すゾロ。
「え!?一本取ったのか!え!スゲーじゃねーか!」
「まぁな・・・」と、照れ臭そうに返す。
「お、お前・・・頑張ったなぁ・・・良かったじゃねーか・・・」
何故だか涙が溢れてくる。
「何でお前が泣くんだよ!?」
「だって・・・お前、頑張って・・・。そうだ!鷹の目!お祝いしよう!良いだろ!」
「ああ・・・」
「お祝いって・・・まだ、一本取れただけだろ!」
「良いだろ!私がしたいんだから!」
その夜の晩餐は、ペローナが腕によりを掛けてミホークに手伝ってもらった、豪勢なモノになった。

「剣術のレベルは新世界でも十分に通用する。あとは覇気、特に見聞色の鍛錬だ。」
「見聞色か・・・。」
「正直、苦手であろう。お前の様に腕が立つ剣士は、見聞職無しでも相当に戦える。それ故に見聞色の必然性を感じ難いのだ。
しかし、どんな達人で有っても、目で見てから体を動かすのでは遅いのだ。見聞色ならその過程を短縮できる。これはレベルの高い剣士同士では決定的な差になる。」
今日はミホークの口も軽い。
「見聞色が使えれば目を瞑っていても見える。斬撃の軌道が見える。相手の行動の次が見える。優れた者なら未来が見える。」
それができりゃ仲間を守ってやれる、そう言うとゾロはワインを飲み干した。

それが一転。
「あ、私のせいだ・・・浮かれて、お祝いとか言って・・・。ロロノアの気が緩んだんだ・・・。」
ベッドに横たわるゾロを見てペローナは自己嫌悪に襲われていた。
「気を病むな。お前の責任ではない事はロロノアが一番分かっている。」
「鷹の目・・・」
「船を出す。医者を連れて来る。早ければ明日の昼には帰れるだろう。」
そう言うとペローナの目を見て強い口調で言った。
「しっかりしろ。コイツは死にはせん。留守中、ロロノアを頼む。」
弱々しく頷くペローナ。

ミホークは医者を連れて来るために船を出した。

一晩、付きっ切りで介護して、気がついたら夜が明けていた。
グッタリとベットに横たわる体からは、いつもの様な生命力を感じない。

「お前、ここに来た時もそんな風に死にそうだったよなぁ・・・。」

唐突な再会から思っても見なかった共同生活、今に至る出来事をペローナは思い出し、目から涙が溢れる。
「ロロノア、死ぬなよ。お前、約束が有るんだろ?仲間の処へ帰るんだろ?」
ゾロの言う事は二言目には「仲間」「約束」だ。
それがペローナには羨ましくも有った。
「ごめんなロロノア・・・ごめん・・・。なぁ、あたしの目をやる・・・だから、だから死ぬな・・・。」
ベッドに顔を埋めると涙が止まらない。

ペローナの頭を手が触れた。
「おめーの目玉なんかデカくて入らねーよ・・・。」

弱々しく笑うゾロ。

「代償はデカかったが、得られたものも大きかったぜ・・・。」
武装色の覇気に比べて習得が遅れていた見聞色の覇気。
「鷹の目の斬撃ををかわそうと思った時に、見えたんだ、斬撃の軌道が・・・。
おおコレが見聞色か!と、思って感慨深く思ってその軌道に見とれていたら・・・。」
「・・・避け損なった・・・ってか?バカヤロー!!」

その時、医者を連れたミホークが到着。
「生きているか!?ロロノア!!」
入れ替わりに、怒りながら出て行くペローナを不思議そうに見送ったミホークにうなだれたゾロが言う。

「お、俺なんかが、生きていて・・・ホント、すみません!」

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2018-09-09 08:51:28 +0000