サウスエンド桟橋鉄道の電車(1949~1978)

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 イギリスには長大な桟橋の上に敷設された桟橋鉄道という小規模な鉄道があります。テムズ川の河口にあるサウスエンド=オン=シー(Southend-on-Sea)は古くから海浜リゾートで栄えた街ですが、この辺りのテムズ川の川幅は6kmありながら遠浅で客船を陸地に接舷することは不可能なため、19世紀になると長大な桟橋が建設されました。そして、1888年から全長2.4kmのサウスエンド桟橋の建設が開始され、乗船場と陸地を連絡すべく、1890年に桟橋の上に建設されたのがイギリス最大の桟橋鉄道であるサウスエンド桟橋鉄道です。
 開業後は1930年代までに全長2kmの路線が完成し、開業後60年が経った1949年に導入されたのが本作の電車です。この電車は自動車メーカーであるAC carsで28両製造され、電動車3両と付随車4両(M+T+T+M+T+T+M)の7両編成が4本製造されました。ゲージは3フィート6インチ(1067mm)で線路中央に設置された第三軌条から直流550Vを集電しました。全長9m、全高2.36m、全幅1.98mの小型の電車で、軸間距離4.42mの2軸車で、車輪は直径60cmの弾性車輪でした。電動車には17馬力モーターが2台取り付けられており、最高速度は29km/h出せました。車体中央に両開きドアが取り付けられており、ドアを境に木製ベンチがロングシートとクロスシートに分かれていました。小さい電車ですが、空気ブレーキに自動ドア、総括制御を備えており、7両編成の座席定員は245名で軽便鉄道というよりも小型の地下鉄電車というのが適切な表現でしょう。
 当時のサウスエンド桟橋鉄道は途中駅なしの全線複線でダイヤはピーク、オフピーク、ローシーズンに分かれており、それぞれ4編成の列車の内、全部、2編成、1編成で運行していました。鉄道ファンの堀淳一氏のレポートによると、桟橋には船着き場としての機能以外に遊歩道やボーリング場も備わっていてレクレーション施設にもなっており、日光浴や釣り、散歩などで訪れる人も大勢いたそうです。また、外航船が桟橋に接舷した時にはラッシュ時のロンドン地下鉄並の混雑となり、夏のシーズンでは昼間は4分半、早朝と日没後には8~9分間隔で運行されていて、都会の地下鉄なみの運行頻度があったそうです。
 長らくサウスエンド桟橋鉄道の主役を担った電車達ですが、1960年代から海外旅行の一般化によってサウスエンド=オン=シーの海浜リゾートは衰退を始め、1970年代に入ると、運行されるのは1~7と22~28の2編成のみとなり、余剰となった電動車の1両は客室を撤去して電動貨車となり、荷台に桟橋の商店への荷物の運搬に使用されました。そして1970年代末にサウスエンド桟橋はリニューアル工事が行われることになり、これにあわせて桟橋鉄道は3フィート(914mm)ゲージの非電化鉄道に変更され、電車達は役目を終えました。現在では何両かが保存されているそうです。
 本作はhttp://www.rmweb.co.uk/community/index.php?/topic/79419-southend-pier-railwayに掲載されていた図面をもとに1.5/80スケールで作画したものです。現役時代の7両編成を3両と4両に分け、さらに電動貨車に改造された車両も描きました。

-参考資料-
http://www.rmweb.co.uk/community/index.php?/topic/79419-southend-pier-railway
http://www.greywall.demon.co.uk/rail/spr.html
http://citytransport.info/S-Pier.htm
https://en.wikipedia.org/wiki/Southend_Pier_Railway
英国・北欧・ベネルクス 軽鉄道の旅 堀淳一 交友社

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2018-08-26 14:03:11 +0000