ワノクニの船着場。
ココが我が寝床とばかりに甲板に寝転んで、「(自称)世界一の剣豪(になる男)」は高鼾を上げる。
小春日和の午後、麦ワラの仲間たちは其々の用事で出払っている。
サニー号にいる時のゾロは寝ていても常に周りへの警戒を怠らない。
半分寝て、半分起きている。
そんな状態だから睡眠時間は人の二倍。
いつも寝ている様に見えるが仕方がない事なのだ。
「ルフィの夢の為、俺の夢の為、仲間達の夢の為、サニー号は俺が守る!」その責任感は仲間達も一目置いている。
例え肩書きが「戦闘員」でも、皆にとってゾロは副船長で有り、現場監督で有り、皆の夢を叶える責任者なのだ。
(オレは肩書きに拘っちゃいねー。)
それがゾロの生き様でも有った。
そんなゾロが寝ながら気がついた。
(ウソップが帰って来たな・・・)
船へ繋がる階段へ登るウソップの足取りは軽やかだ。
「おう、なんか良い事有ったか?」
「お、悪りぃ。起こしちまったか?」
「いや、今起きた。」
「ニュースクーの新聞にイーストの記事が載っていたんだよ。」
「へー。何か面しれー事書いて有ったか?」
そう言うと、脇に置いて有った酒瓶を取りラッパ飲みをする。
読めと言う事かと理解したウソップはゾロの正面に腰を下ろし新聞を広げた。
「なんでも『東の海の新魔女伝説』だとか」
「は〜ん?オカルトかよ。東○ポ提供か?」
「いや、実際の話らしい・・・読むぞ」
『昔から海にまつわる神話、伝説を上げれば枚挙に遑が無いが、昨今の巷を賑わす新伝説が有る。イーストブルーの僻地クライガナ諸島、その昔にシッケアール王国が有った海域・・・』
「!ゲフ!ゲフッ!!ゲフン!!!」
急に噎せ返ったゾロに驚いてウソップが顔を上げる。
何に動揺したのか珍しい。
「あーちょっと酒が変な所に入っちまった・・・続けてくれたまえよ・・・。」
明らかに動揺している。
日本語が変だ。
『この海域を通る船に最近、不可思議な事が起こるのだ。暗く霧が立ち込め、海難事故の多いこの海域で突然、乗組員が脱力感、疲労感に襲われ立って居られなくなり膝を着く。そして気がついた時には空は晴れ、波は穏やかになっているのだが、船の中から食料や財宝、衣服や日用品が少しだけ無くなっている事に気がつく。何人かの船員は虚脱感の中で「赤い髪の美少女と部下の黒服の剣士の姿を見た」と言う者もいる。航海の難しいクライガナ諸島で「安全な航海の為に魔女が通行料を取っている」。コレが船員達の間で言われる「シッケアールの魔女伝説」である。』
(ま、間違えねー・・・。何やってんだアイツ等・・・)
一区切り付けて顔を上げたウソップは顔面蒼白になっているゾロを見て驚いた。
「おいおい!大丈夫か?気分悪くねーか?」
「いや・・・危ねーから、そこには、近づかない方が、イイカモネー・・・」
明らかに動揺している。
言語機能が変だ。
「続き有るけど、読むか?」
「・・・ああ。」
『世界政府が最近、この伝説に興味があるらしい。関係者の話では、この「シッケアールの魔女」を七武海に迎えようと言う話が有るそうだ。七武海は麦ワラ海賊団に撃破され続け、新加入者の離脱も相次いでいる。「シッケアールの魔女」が海賊かどうかは不明だが、その行為が人為的な物であれば海賊行為とみなす事ができるだろう。そして、「航海の安全の為」とか「美少女」と言う点からも庶民受けが良く、最近信頼がガタ落ちの政府人気の高揚策として効果的だとの指摘もある』
ゾロは「七武海」の所で飲みかけた酒を盛大に吹き出した。
その後の記事にアングリと口を開け固まっている。
ウソップは気が付かないフリをして最後まで読み通した。
「へー、もしこんなヤツが七武海になったら敵に回したくねーな。」
ウソップが肩をすくめる。
(あーコイツ、ネガティヴホロウが効かなかったから分かんねーんだな・・・)
それにしても、もしアイツが七武海になったら・・・「元七武海幹部にして現役七武海」。
そしてヤツは「世界一の剣豪にして現役七武海」。
自分は・・・「(自称)世界一の剣豪(になる男)で戦闘員」・・・。
いかん!
コレではアイツ等に会った時に確実にバカにされる!
自称ではなく事実として「世界一の剣豪」にならなくては!
そして
「おい、ウソップ!俺達はルフィを絶対に海賊王にするぞ!!」
「何だよ急に・・・」
そうだ!ルフィが「海賊王」になれば七武海がなんだ!
肩書き上はオレの方が上だ!
「ルフィ、話がある。オレを『海賊王軍-剣術戦闘隊-大隊長』に任命してくれ。」
ロロノア・ゾロ、肩書きに拘る。
2018-06-13 12:52:21 +0000