「...」
帰り道、俺も先生も一言も交わさなかった
一緒に帰るなんて、初めてで
嬉しいことこの上無いはずなのに
さっき俺が聞いてしまった内容
それを意識しているのは間違いないのだ
いつもの道を通って、横断歩道を渡って...
無言のまま足取りは自宅の近くまで迫っていた
いつもの公園を過ぎた その時
牧野「あ、あの」
いきなり先生が足を止めたので 俺は振り返った
牧野「さっきの、柿崎先生とのお話ね
先生にはお茶を濁して帰ってきたけど
あれは、本当なの
私は、それでも教師を続けたくて、ここに来たの」
言いづらそうに、精一杯絞り出したような声
目から涙が溢れている
俺「無理しないで下さい、話したくないことは
無理に言うことはないんです
俺も、いきなり覗いてしまってすみませんでした
はじめ見かけたとき
先生の顔が沈んでいたから、心配で、興味本位であんなことしてしまって
それがこんなことになってしまって
軽蔑されても仕方ないです」
牧野「軽蔑なんて、したことないわ
貴方は特別だもの...」
俺「え」
先生がまずい。という表情になり
あわてて目線を逸らした
牧野「お、お家、電気点いてないみたいだけど?」
俺「今日は家族旅行行ってるんです ちょっとした記念日で。
だから家には俺一人ですね、明日学校もあるんで行けなくて
あ、ノワもいますよ」
牧野「元気?」
俺「相変わらず俺には懐きませんが、元気ですよ」
いきなり変わった話題に、場の雰囲気も柔らかくなる
牧野「それにしても、一人だと大変ね」
先生はこちらに心配そうな視線を向けた
2018-06-03 19:03:53 +0000