「何の為に旅を始めたのか、いつまで旅を続けるのか。その始まりを忘れる程の歳月を、ただ繰り返してきた一族だ」
▽アンフェ・ルプランドル
所属国:シータ=レイア / 所有ポイント:30pt(30+0+0=30pt)
死者の魂を故郷へ帰す旅 ただ繰り返した成れの果て
暗くて冷たい海の底で 生まれた意味も知らないままで
たった一人で生きていた
朽ちゆく世界にハナムケを【illust/67637283】
< 月夜行(ツキヤコウ) >
魂を灯に海底を歩いて旅する種族。海を彷徨う死者の魂を灯に変え、故郷の海へ還そうとする本能を持つ。青の国シータ=レイアを拠点とし、ごく稀に陸地に上がることも。
ただし太陽の光が命とり。直接日光を浴び続けると、わずか一時間足らずで光になって消滅する。また日光を避けたとしても、海底で生きる体は昼の環境には適応できず、三日ともたず衰弱して同じ末路を辿るだろう。そのため夜明け前に姿を消すが、中には想い人を追って海に帰らなかった者もいたようだ。
その生態から同胞以外と結ばれるのは稀。番を得ても在り方は変わらないが、『帰るべき場所』として知覚し、世界の何処にいても目指すことが出来る。
光を散りばめながら海底を行く姿を喩えて月夜行と呼ばれた。砂の上に光る足跡を見つけたら、それは彼らの旅路の証。
< 灯柩 >
彷徨う魂を火に変えてランプに灯すことが出来る
< 素敵な御縁を頂きました!(5/27) >
リュネットさん【illust/68797085】
海の上を漂う貴方と、海の底を旅する私。
「…いま、誰かの声が」
波にさらわれた小さな瓶詰め人形は、まるで夜を流れる星のように、海の底へ落ちてきた。
「…アンフェだ」
「アンタ、口が利けるのか。喋る人形は初めて見た」
「分かった。俺がアンタを故郷へ届けよう」
そうして死者を故郷へ送り届けてきた少年は初めて、生者を家族の元へ帰す旅に出た。
「この暮らしも嫌いじゃないんだ。こうして人に会うこともある」
「…悪い。人と話すのが久しぶりで、何を話せばいいか分からないだけだ」
初めての生者との道行は、物言わぬ死者のそれとはまるで違って。
「…確かにアンタにとっては退屈な場所かもしれないが、一度だって同じ景色も、同じ旅もない」
「アンタに見せたいものがある。ここもそう悪い場所じゃないんだ」
出会うはずのなかった二人は。
「…美しい歌だな」
「アンタは眩しい。ソラの光みたいだ」
やがて一つの約束をした。
「ああ、アンタを必ず帰すと約束しよう」
「アンタの言う通り、綺麗だ。初めて見た時、流れ星みたいだと思った。流れ星っていうのは、…アンタの方が詳しいか」
「…悪い。俺は家族を知らないから、そういう気持ちはよく分からない。…けど、アンタの家に帰りたいという願いは、叶えてやりたいと思う」
「可笑しいな。いつもと同じ旅のはずなのに。アンタがいたから、かな」
約束が、やがて自分の首を絞めた。
「そうだな…、アンタを…必ず…」
生まれて初めて、旅の終わりに待つ孤独を知るだろう。
「もうすぐシータ=レイアが見えてくる…」
(ああ、月夜行の、旅の始まりは…)
(俺の、生まれた意味は……)
二度会いたい人などいなかった。
帰りたい場所などなかった。
さよならしか知らなかった。
だから───を、知らなかったのだ。
「アンタの言った通り、俺は幸運だったと思う」
「アンタの会いたい人に、会えるといいな…」
(俺が彼女から何を、奪える…)
(俺が彼女に、何を、与えられる…)
それでも貴方に、願っただろう。
「リュネット…っ、また、会えないか───」
ーーーーーーーーーー
アミュール【illust/69935721】/ エメット【illust/69606051】
「…母さんにもう一度会いたいと思った時、思い出した事がある。…君は母さんに似てる。君にもいつか、分かる時が来る。アミュールにとっての『帰るべき場所』が何だったかは、その時に答えを出せばいい」
「『運命の人』か、俺には分からないが…母さんを一目見て綺麗だと思った、星のように。…いつか、お前も運命の旅をする時が来る。だから、それまではあまり母さんに心配をかけないでくれ。…エメットは俺に似たんだろうか」
2018-05-19 09:33:26 +0000