こちらの素敵な企画に引き続き三世代目に2人目を参加させていただきます。
縁は異なもの味なもの【illust/67011335】
※2枚目にスプリットタンがあります
名前:水崎(みさき)
種族:妖怪(ヒカギリ・七人みさき・牛鬼)
性別:男
年齢:20から面倒で数えてない(見た目20代前半)
身長:230㎝
一人称:俺 二人称:お前、呼び捨て
家族
父:爪白【illust/68099369】
「そういえば、父君に最近会っていないな。こちらのことも気にはしてないだろうが久しぶりに顔を出すかな」
母:モブ妖怪(ヒカギリ)
「母君のことはよく覚えていないが、優しい手が撫でてくれたことは今でもちゃんと覚えている。それで十分だ」
七人みさきと牛鬼の血を引く妖怪の父とヒカギリという妖怪の母を持つ妖怪の男。
詳細【novel/9677816】
🌸素敵なご縁をいただきました
何者からも守りたい大切な存在:ネコさん改め、小夜さん【illust/68882683】
ある日のことだ。自分の縄張りの山に小さな気配が入り込んだのを感じ様子を見に行った。
俺が住み付いてから人も寄り付かなくなったこの山に一体誰がどんな目的で入り込んだのかと思えば、そこにいたのは小さな黒猫だった。
「お前、そこで何をしている。ここは俺の縄張りだ、もし荒そうなどと思っているなら承知しないぞ」
その小さな猫が手に山菜を持っていたのでもしや山を荒しに来たのかと威圧を込めた声を掛けたが、振り向きこちらを見たその姿は恐怖など全く感じていなかった。
俺の手で一握りでもすればすぐに潰れてしまいそうな小さな猫なのに、随分と胆が据わっているのだな。
どうやら荒すつもりはなかったようで素直に謝り山菜を置いて帰ろうとしたので咄嗟に声を掛けてしまった。
「荒すつもりでなかったのならいいんだ。山菜どうするつもりだったんだ?料理?…すじょうゆ?み、みりん?何だそれは、美味いのか?」
「興味…まあ、興味があると言えばそうだが…味気ない飯に飽きてしまって美味いものが食べたくてな。詫びにもらってもいいのか?それは、食べてみたいな」
「好きな味、自然で取れるものはどれも好きだ。何だこれ?こんなものが甘いのか?……んっ!甘い!お前、凄いものを持ってるな!!こんなに甘くて美味いの初めてだ!!」
小猫から渡された飴というものを口に入れた時、あまりの甘さと美味さに驚いた。美味い!凄い!と声が大になり跳ねる尾が己が興奮しているのを隠すことなく表す。
勝手に山に入ってしまった詫びをしたいと申し出るところや、こんな美味いものをくれるのだから悪い奴ではないと理解し、寧ろいい奴なのだなと気に入りさえした。
山菜も小猫が生きる上で必要なのだろうと思い、俺に声を掛けてくれればいつでもこの山に来てもいいし食材も取ってくれて構わないと伝え、別れ際に名を聞かれたので名乗り小猫に名を尋ねれば名前がないから『ネコ』と呼んでくれと言われた。
料理や調味料を楽しみにしていると伝え、その日はネコを見送った。
それからネコは頻繁に山に来るようになった。
ネコの作った様々な料理を分けてもらい美味いと頬張ればネコは嬉しそうにし、淵の畔で他愛のない話をする時間は穏やかな時だった、たまに俺が狩りに行くのに付いて来て仕留めた獲物を得意げに掲げて見せれば凄いと手を叩いてくれた。
共に過ごす時間が増えネコが嬉しそうにしていると俺も嬉しくなり心が高鳴った。
「おお!今日も料理があるのか!ネコの料理は初めて食べる味ばかりだがどれも美味いからいつも楽しみなんだ!」
「狩りの腕がいいなどと褒められることなど滅多になかったから嬉しいが、少し照れ臭いな…。フッ、ネコも嬉しいか。そうか」
「ネコは以前に名がないと言っていたが不便なことはないのか?…呼ばれる時の心地か、そうだな。名、か…」
そんな中、たまたま肉の調理方法の話になった。味付け一つで同じ肉でも様々な味に変わるのだなとネコの話を聞きながら、ならば人の肉も調理次第でどうにか…いや、あれは元が不味いからなと独り言を零せばきょとんとした顔でネコがこちらを見ていた。
俺は何か可笑しなことでも言ったのだろうか?
「何を言っている、妖怪が人を食うんだぞ?あんな非力な生き物は俺達のような妖怪に襲われることや食われることを恐れて…いる、のでは、ないのか?」
「…ん?ん?非力だろう、俺など人を一瞬で殺せる。な、何?ネコは人に食われかけたのか?驚いた、そんなことがあったのか」
「凄いか、俺の血筋は人を襲い食らう妖怪故に俺も人に恐れられている存在だ。そうか、ネコのように人に対する考え方が俺と逆の妖怪もいるのだな…」
その時に知ったネコの生い立ちに沸々と湧いてくる感情があった。気に入ったものに執着する感情とは違う、俺がネコを守りたいという庇護欲。
それ以降、俺の傍にはネコがいることが当たり前のようになっていき懐いてくれているのだなと思うと素直に嬉しくなった。
ネコが街に下りる時は山の麓までネコを見送り、ネコが帰ってくる頃にまた麓まで下り小さな姿を出迎えた。
ネコが笑って俺の元に帰って来る姿に心が満たされていくのを感じた、ずっとそうであればいいのにと思う程に。
そんな日々を過ごしていたある日、何時もの様に山に来ていたネコが日も暮れてきたので帰ろうとしていた時だった。
ネコ、と静かに呼べばくるりと小さな姿が振り返る。少し話があると言えば続きを待つようにこちらを見るネコの瞳が薄暗い中で輝いていた。
「俺は気に入ったものに執着する質だ。だから、お前に執着するのも気に入っているからだと思っていた。だが、ネコを何者からも守りたいと思う感情や、このまま帰したくないと…ずっと傍にいたいと思う感情はそれだけではないのだと」
「お前が何よりも好きなんだ。だから、もし、お前が俺と共にいたいと思ってくれるなら…名を、受け取ってほしい」
「金に輝く瞳が月のようだと、漆黒の毛色が夜空のようだと、夜の空を見上げた時にネコを思い出してそう思った。お前は小さな夜のようだと…だから、お前に『小夜』と名を贈りたい」
ぽつりぽつりと気持ちを伝えれば驚いたのかあたふたと落ち着きがなかったが、俺が正面で膝を付き目線を合わせればすっかり大人しくなってしまった。
俺を慕ってくれていると、名を大切にしてくれると、嬉しそうに言う姿が愛しくてその頬を手の甲で撫でながら、その耳にだけ聞こえたらいいと小さな声で呼んだ。
小夜、と。
ありったけの好きだという気持ちを込めて。
2018-05-07 20:45:17 +0000