HASU様よりいただきました。
user/5133364
最後の新刊の口絵サンプルです。
小説サンプルはこちら
novel/9339988
以下未公開本文ちょっとだけ抜粋。
―――――――――――――――――――――
「私は、私に出来ることをやる。やりたいように」
紫は苦笑する。輝夜までも早苗と同じことを言うのか。
だが、その続きは、紫も予想しないものだった。
「貴女は……貴女のやりたいことをやればいい」
輝夜の声は突き放すようでいて、どこか労るようにも聞こえた。
「もう……いいのよ」
そう、もういいのだ。無理をしても、何もかも手遅れ。
何処へともなく去って行く輝夜に対して、もう紫は寂しさを感じなかった。
――私の……本当の……願いは――
……そこにいたのね。
もう紫は『八雲紫』ではなかった。
――今、行くから―――
もう、選択は誤らない。
人間のままで良かったのだ。
彼女の過去に何があったのか、どうして親友を失ったのか……
もうそれは彼女しか知らないこと。解らないこと。
ただ、解るのは……
『八雲紫』は限界だった。帰る場所を探していた。
至福と心地よい疲労とわずかな罪悪を感じながら。
2018-04-28 05:56:00 +0000