「やめて、先生ッ!」
俺は二人の間に割って入った
牧野「た、立花!?」
俺「すみません、心配でこっそり尾けてきたんです」
牧野「...」
俺「こんなこと、なんていうか、らしくないです
いつもの明るくて優しい、あなたに戻ってください」
俺は相手の男を見た。軽い鞄なので怪我はないと思っていたが
鞄のふちか金具が当たったのだろうか、頬を切っていた
俺「頬、切れてます 痛くないですか?
俺ん家、彼女の家の真向かいなんです
今薬を持ってきます」
男「い、いや、結構です」
頬を触って傷を確認しながら、先生ではなくて俺を凝視している
怪我よりも俺の乱入に驚いているようだった
牧野「もう帰って 私に関わらないで」
男「いや、まだ話が」
牧野「お願い...
もう、私の居場所はあそこにはないのよ」
先生の搾り出すような声に、諦めたようなまなざしを向けると
男は背を向けた
辛そうに首を横に振ると、そのまま俺たちから遠ざかっていく
聞きたいことは一杯あった。けど
先生は過去のことで身体を壊したといっていた
だから、切り出せなかった
お互い、しばらく無言だった
ほんの少しの合間に、日が暮れ街灯に明かりが灯り始める
それを眺めているうちに、詮索してはいけないってことをすっかり忘れてしまう
俺「さっきの人、前の彼氏さん?」
(しまった)
しかし、先生の反応は意外にもちょっと笑ったように見えた
牧野「違うわ 幼馴染なの
市の教育関連の仕事をしていてね
去年偶然再会したの。結婚もしてるわ
それにしても...酷い姿、見せちゃったね」
そう言う彼女に、俺は...
2018-04-24 19:44:24 +0000