「俺とは普通に喋ってほしいです」
そう言うと流石に彼女は驚いた
牧野「...いいよ」
しかし、恥ずかしそうに下を向きながら確かにそう答えたのである
俺「え?だって今言ったことって授業とかと関係無いじゃないですか
牧野「ふふっ、自分で言ってどうするのよ
先生になりたての頃ね、学年主任に毎日呼び出されては
やれ威厳がないだの、生徒に舐められ過ぎだのって怒られてさ
それで言葉遣いなんかも見直したんだ
他の先生の授業見にいったり、果ては映画やドラマまで見たり
人の見た目を、極端に気にするところもあるから
多分みんな思うんだよね。なんでこんな話し方するんだろうって
そういうわけ。自分自身でも無理してるの
そこでとっさに浮かんだ疑問を、続けてぶつける
俺「もしかして、この間のことの埋め合わせみたいなとこもあります?」
牧野「ちょっとね でもそれが全てじゃないよ」
先生が立ち上がると、それに合わせる様に風が彼女を撫でた
牧野「でも、あくまで学校の外でだけ、それが約束ね
といっても夏休み入るから当分は会えないか
いや~、字が下手とか言われたらどうするかと思ったよ」
お尻のほこりを払いながら、ちょっとだけ安心そうな表情
牧野「じゃぁ今日はここらで帰るか」
そう言ってバッグを取ったまま、先生は動こうとしない
俺「どうしたの?」
牧野「立花と、深山には感謝してるんだ
この仕事、合わないかなって思ってて、ずっと悩んでてね
この、夜の公園での話し相手、随分救われたよ
あの時のお礼だって、ずっと言えてなかった
ごめんね ありがとう」
俺「えっ?」
そう言い残すと足早に自宅に向かって駆け出していく
自分の精神的な弱さのことを気にしているのだろうか
それでも、遠くなる背中とは裏腹に、気持ちの距離はずっと近くなった感じがした
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ご投票どうもありがとうございます
2も3も、みなさんのお気持ち溢れているんですね
これからもどうぞよろしくです
2018-02-12 19:34:45 +0000