【ハロ敵】カイル【追】

あさひ
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『ハロー、宿敵』【illust/65697558】に参加させていただきます。企画開催おめでとうございます!

カイル・ノット(Kyle・Knott)

 31歳の児童書作家。夜は警察官。
 『妹』の仇を追っていますが、『妹』は人間なのかもしれないし、人形なのかもしれないし、はたまた物なのかもしれないというふわふわっぷりです。本人の記憶がガバガバなので宿敵様に合わせて考えていけたらいいなあと思っています。
 少し特殊な人間性をしていますが、会話する分にはわりと普通です。たまに噛み合わないくらい。昼は特に、あまり個人を認識してなさそうな節がありますが、メモを取ったり覚えようとする姿勢は見られます。いつも公園のベンチなどでメモを取ったり、見えないものを見ているみたいな顔をしていたり、ただぼんやりしていたりします。
 両の手のひらに大きめの火傷があり、昼は隠していませんが夜は手袋で隠しています。何かが見えた気がして火に手を伸ばしてしまった名残。そういう怪我が多い。

 宿敵さんのことは恨んでいるというより、自分の正気の在り処として執着している方が比重が重め。対応などにもよるかもしれませんが、憎しみ一辺倒になることはありません。

□交流でも外部でのお話でも、お相手様に合わせてのんびりやっていけたら…と考えています。

□申請について
細かな指定などはありません。『妹の仇』という設定がついてしまうことだけご了承ください。『妹』が人なら殺害や傷害、詐欺、誘拐、物なら窃盗・破損など、色々なことに対応できるかな……とぼんやり考えております。
 恐れ多くもメッセージいただいた場合はなるべく即日、遅くとも2日以内に返信させていただきます。

素敵なご縁をいただきました! クインシー・F・テイラーさん【illust/67038350

 妹がいた。
 僕よりずっと年下で、僕とは違いしっかり者で、けれど僕と同じように幅広い人付き合いには向いていないような不器用な子。すぐに妄想から戻れなくなる僕を呼び止め、引き戻してくれるたったひとりの家族。


 ある朝。妹は首を無くした姿で見つかった。
 その光景があんまりにも現実味がなくて、唐突で、趣味の悪いものだったから、いつもの妄想かと思うくらいに。こんなことが現実であってはいけないだろうと思った。僕は考えるのをやめてしまった。醒めない微睡みの中にいることだけが、僕の価値であると、それを逃げ道にしてしまった。
 こんなことが、夢であるはずもなかったのに!

 ある夜。妹と同じ姿で横たわる女性を見た。僕は全てが妄想でないことを理解した。晴れない霧のかかった思考から、一転目が覚めるような心地だった。僕にはまだ覚えていることがある。これ以上取りこぼさないために。僕が僕を失わぬうちに。妹が確かに存在したことを、他ならぬ僕が理解するために。
 狂気そのもののような姿に、僕は僕の正気を見たのだ。
 夜の自分が、正気の自分が、そうと信じたい自分が、答えを得なければ。


「そうだ、きっと君だけが 僕の正気を証明してくれるのだろう」




 ある日。長い微睡みからふと覚醒すると、手元には断片的ないくつかの走り書きがあった。
 物好きな読者と食事を共にすること。その日までに僕は僕の見窄らしい格好を何とかすること。この仕立て屋が評判がいいこと。
 仕事関連の誰かが言っていたことを書き留めたのだろう。まだ目が覚めているうちに赴かなければと足を運んだ先は、雰囲気のいい仕立て屋だった。


「こんにちは、お邪魔します。今日は……そう、このメモの、こんな内容で」
「……何処かでお会いしましたか? 僕は君に、見覚えがあるような」


 他人の空似だと彼は言った。そんなものだろうと僕は思った。僕の記憶があてにならないことは、誰よりも僕が知っているものだから。何処かで会ったような、なんて陳腐な物語の導入のようで、何だか好きだなとそんなことを考えていた。

「君は確か、クインシーくん。…よかった、合っていましたか。先日は素敵な仕立てをありがとう。とても素晴らしかったからお礼を言うべきだと思って、また来ました」
「失礼、そこに小人が……いえ、小人がいそうだなと思って。ぼんやりしていました」
「君は穏やかで控えめで、所作がきれいで、主人公然としていて素敵ですね。だから覚えていられるのかな」

 彼のことは何故だかあまり記憶からこぼれ落ちなかった。それが何だか珍しくて、嬉しくて、不思議で、彼も嫌な顔せず話してくれるものだから何度も足を運んでしまった。
 沢山の話をした。夜でもないのに、覚えていられることがあるのはとても嬉しい。まるで普通の人になったみたいだ。夢のような話をしている。
 僕が経験できない話を聞くと物語を書きたくなるし、何より、僕の描く救いも報いもない物語を読んでくれたお礼にもならないけれど。それでもいつか、近いうちに、君が出てくる物語を書きたいと思う。

「僕には苦手な締めくくりだけれど、そうだな……君にはきっと、優しいハッピーエンドが似合うから」



「ああ、本当に。月の綺麗な夜ですね」

「ずっと君に会いたかった!」



 考えたくないことばかりが頭の中に。手放せない妄想が、さめないまどろみが、長い夢が僕のすべて。
 見たくない現実も、それが、正気の証明であるならば。


随時編集中...

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2018-02-02 05:16:03 +0000