ラケダイモンの戦士達

Legionarius

隊長「アルキビアデスのバカはどこに行った!!」
スパルタ兵「アルキビアデスさんならつい先ほどティッサフェルネスさんと大事な話があるとかで出掛けましたよ」
隊長「あのクソ蝙蝠野郎、王妃を寝取るついでに俺の妻にも手を出しやがった!ふん捕まえて生きたままモツ抜いてやる!」
(大原部長オチ)
――アギス2世とリュサンドロスからアルキビアデス追跡・捕縛の密命を受けたスパルタの2人の精鋭、ギリシアとペルシア、地中海を所狭しと駆け巡る命懸けの冒険が今始まる……。

アルキビアデスについては前回を参照。
華麗なる扇動者 | Legionarius [pixiv] illust/65529264
数年前に描いたのはテルモピュライ、ペルシア戦争時(前5世紀前半)のスパルタ軍だったので(ラケダイモンの掟 | Legionarius [pixiv] illust/4309845
今回はペロポネソス戦争(前5世紀後半)でアテナイと激突していた頃のスパルタ軍を。リュサンドロス(スパルタの将軍、提督)指揮下、アテナイの拠点を攻撃する準備中とかですかね。

その軍事を重視した質実剛健な特異極まりない国制には前回触れましたし、有名なことでしょうから繰り返しは避ける事と致します。当時の兜(コリント式に耳の穴が開いてる改良型とピュロス式)や武装はだいたいこんな感じでしょうか。スパルタと言えば映画の300などが広く知られておりますが、劇中の半裸の戦士達は肉体の躍動感や迫力を映えさせるための演出で現実にはいなかったでしょう(映画は映画なのでそれで良いと思います)。重装歩兵はその名のとおり兜に鎧、盾に脛当てなどをつけた重装備の戦士達であり、コストや敏捷さを要求される投石兵や軽装歩兵とは異なり、白兵戦の主力を担う為にも胸や腹を無防備に晒すことはありませんでした。

ペロポネソス戦争はスパルタの勝利に終わりますが戦後もアテナイなどの諸都市は存続し、ペルシアによる各都市への資金援助(ギリシアの諸都市間を常に拮抗・抗争させておくペルシアの対外戦略)により、前4世紀に到るまでスパルタと対立し続けることとなりました。苦労してギリシアの陸海の覇権を手にしたスパルタは皮肉にもそれがもたらす富による社会格差が鮮明となり、次第に尚武の気風と共同体の団結を失ったとされています。

スパルタの覇権は長くは続かず、前371年にレウクトラの戦いでテバイに敗れ、そのテバイも前362年にマンティネイアにて勝利を収めるも有力な指導者の喪失が続き、覇権を失いました。その後、前4世紀中頃から存在感を増したマケドニアがフィリッポス2世統率の下、ギリシア世界に影響力を及ぼし始め、続くアレクサンドロス大王の時代へと至り、ギリシアはマケドニアの支配下に入る事となったのです。

とはいえその末期までスパルタが極めて強力な国家であったことには変わりなく、諸都市はその戦士達と伝説の数々を恐れ、それが故に“スパルタ”は厳格さや力強さを象徴する言葉として現代まで長く語り継がれているのでしょう。
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アッティカ人がスパルタ人の剣が短いことを笑うと、スパルタの王アギスはこう答えた。
“我々は短い刀で敵の近くに迫る”

あるスパルタ人の母は息子が剣の短さに不満を漏らすのを聞いて諭した。
“敵の懐に入ればちょうど良い長さになるでしょう”

剣が短い理由を問われたアゲシラオス王は誇らしげに答えた。
“我々は敵に近づく事を恐れない”

接近戦が好みで戦士の誇りだったのでしょうな。

#スパルタ#古代ギリシア#ペロポネソス戦争#紀元前5世紀#重装歩兵#armor

2017-11-09 14:54:09 +0000