Before⇒【illust/60032614】
「言わなきゃ、後悔すると気づいたんです」
☑️そこに在る花:スノードロップ。貴女【illust/59820633】と一緒に。
戦は終わり、街は平穏を取り戻しつつある。
爪痕はまだはっきりと残っているけれど、いずれそれも消えてゆくのだろう。
数ヶ月後、私は彼女と共に石の国へとやって来た。メルテも知らない私だけの秘密の場所。
約束通り私が彼女を懐に抱え、揃いのマフラーを巻いて春を告げる花が咲く場所へ。
* * *
「ここです、俺がララさんに見せたかった場所!」
「景色、綺麗でしょう? 夜には星もたくさん見えるんです、今よりもっと寒いけど。
……ここ、最初に見つけた時は何もなかったんですがぁ……。もっとお気に入りの場所にしたくて、近くの牧師様から球根をいただいて植えたんです」
“春を告げる”という花に、私は何を願ったのだろう? きっと“明けない冬はない”という、そう言った慰めのようなものだったのだろう。
「どうですか?」
と尋ねると、彼女は笑ってくれた。
その笑顔を見て、改めて込み上げる感情に言葉は自然に零れ落ちていた。
「………………好きです」
「俺はきっとララさんの事が、好きです」
はじまりはきっと嬉しかっただけ。貴女が俺の事を覚えていてくれたから。
嬉しい気持ち、楽しい気持ち、そして貴女の傍に居たいという気持ち。
会うたび貴女の存在は私の中で大きくなっていったのでしょう。
あの蒼い月の夜だってそう。一人で街を彷徨う時、はっきりと思ったんだ。
"名もなき大陸”に向けられる明確な殺意、人々の混乱する姿。宿した記憶も泣き喚いていた。
恨み、悲しみ、そして恐怖――――。
【心の隅にあった何か】なんてその前にはちっぽけで、押しつぶされて。
けれど、小さくなった俺を救ってくれたのは貴女がくれた音でした。
ただもう一度会いたい。
単純な事だけれど、きっとこれが愛おしいというものなんでしょう?
「いいんです、貴女を困らせちゃうなって分かってましたから。それに、貴女の事だからきっと……いえ。
でもどうしても自分で言葉にしたかったんです。言わなきゃ、後悔すると気づいたんです」
「…………」
「また来年、この花が咲いたらここに来ましょう」
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* * *
スノードロップの花言葉:希望、なぐさめ。(春を告げる花)
リヴルレイス【illust/59863645】数ヶ月前贈った花⇒【illust/60032614】
2017-10-16 13:00:00 +0000