『それ』は食事を始めるところだった。
偶然見つけた食事を、それは悠々と捕まえ舌なめずりをしながら近づく。
そして一口目を堪能しようとしたその時、凄まじい轟音と衝撃が船を揺らした。
「っ!?」
『それ』がとっさに身構えると同時に、通路のあちらこちらにミシミシと亀裂が入る。
「落ち着いて食事もできないが…まぁ生きがいい方が食いごたえはあるか。」
自身に向けて邪魔が入ったわけではないと理解したそれが、食事を再開しようとする。
その瞬間、それの手が赤く燃え上がった。
ただ『それ』にとって炎は大した脅威ではない。 そう、ただの炎は。
「ッ!!」
『それ』がとっさに後ろに下がると同時に、獲物を捕まえていた手はぐずりと崩れ瞬く間に炭のような黒い残骸になっていく。
そして捕まえていた食事は解放され、炎は食事を阻むかのように壁となる。
『それ』は先ほど生まれた船の亀裂から流れ込むように通路を埋め尽くそうとする炎をにらむ。
捕食者であるが故に理解できたのだ。 その炎が『自身を喰らう捕食者である』と。
「面倒な奴がいたもんだ…。 いや、この器と相性が悪い…って感じか。
より強力に変質したこの肉体なら多少持つだろうが、ただ纏わせただけの肉は秒と持たないな。
しかもこれは炎の端…もうしばらくすればこの炎をまき散らす何かが来るな。」
予想外の敵に動揺はするが、『それ』の口はいまだに笑みを崩してはいない。
それどころか、いまだかつてない珍味の存在を知ったその笑みはより悪辣な欲望を映していた。
常に捕食者であった『それ』にとって自らを捕食する存在を喰うというのはいまだかつてない未知である。
それを味わうことができるのだ。 数百年数千年と言う時の中で貪り続けてなお味わったことのない味を。
「次の獲物は決まったが…さっさとこいつを喰うか。」
『それ』は髪をしっぽのように振るい、壁のように塞いでいた炎を通路ごと吹き飛ばしていく。
髪を多少焦げ付かせながら『それ』は獲物を見下ろして、つまみ食いをする子供のように笑った。
(illust/64947367)→(illust/64946888)→(illust/64977329)の流れです 時系列とかは…こう…パラレル的なアレでお願いします
リニューアルファリムさん(illust/64854311)
カポラさん(illust/63996075)
アルデバランさん(illust/63992990)
漫画でやりたかったけど間に合わないな? ってなった
2017-09-17 11:32:00 +0000