ぼくたちは今日この日に死んでいく数えられる命。
ケイ「師父、あなたは本当に面白い。」
ナカヨシに声をかけられリュシオンとエリーの前に姿を現したケイ。
ケイ「だがちょうどいい。師父に伝えなきゃいけないことがあるんだ。」
エリー「ケイ!あたしたちを騙したのね!許さない!」
解放されたエリーはケイに食って掛かるが、拘束の影響で足に力が入らない。
ケイ「エリー、話しただろう?この方が師父ナカヨシだ。君を助けてくれるそうだよ。
だがエリー、リュシオンくんの言った通りだ、もう少し頑張って。
君はいきさつを話し、僕を弾劾すべきだ。」
エリーはナカヨシの顔を見て、ケイに誘われて戦災孤児互助組合に入ったこと、
騙されて復活者を寄生させられたことを話す。
エリー「発芽したのはなじみの兵隊さんと話している時だった。
兵隊さんは娘さんからの手紙を楽しみにしていたのに…私が…。」
リュシオン「もういい、わかったよ。ナカヨシさん復活者に寄生された部分は
残念ながらもう戻らない。でも命には代えられない。
僕が腕を斬るよ。それでいいね?」
ナカヨシ「話を聞いている間にも進行しているみたいだね。わかった。やりたまえ。」
リュシオンがすっと剣でエリーの二の腕を撫でるとまるでバターでも斬るかのように
音もなくことは済んだ。エリーは安堵し意識を手放す。
切り離された右手はいつの間にか接近していた緋眼の悪魔がわしづかみにし、
なんと自分の右肩に取り付けた。
ナカヨシ「ケイさん、何故そんなことを?」
ケイ「実験ですよ師父。受胎の聖母は堕胎の聖母の逆で、「復活者を生み出す」性質を持つ
復活者もどき。人間を生きたまま復活者にコンバートするためのね。」
ケイはそういうと復活の書を開く。すると彼らの中央に椅子が現れた。
復活者もどきが擬態しているのだろう。
ケイ「師父、この戦争をあなたは『エノから自由を奪還するための戦い』だと称した。
だがそれは違う。もっと根本的な問題が存在するんだ。
そこに椅子が一つあり、人間は二人いるとする。二人はどちらも瀕死で、
椅子に座らなければ死んでしまう。貴方ならどうする?椅子を譲る?
僕は座った椅子からどかないかもしれないよ?」
リュシオン「王権の話…かい?」
ケイ「それもだけれど、全てさ。土地、経済基盤、家屋、仕事、立場。
増やせばいい?そうだね、土地は余っているものね。
でもそんな悠長な話じゃない。その土地が開拓されるまで何年かかる?
それが済むまでは肩寄せ合って飢えを分かち合って生きるのかい?
その間にも復活者も人間もまだ増えるかもしれないのに?
誰が勝ったってどうやっても椅子は余る。だから戦争で減らさなければならないんだ。
数えられる命を!
おそらく復活の印を使ってもここまで増えた復活者を殲滅することは不可能だろう。
そして更なる問題はその先だ。
復活者と人間、手に手を取り合って生きていけるのか?
答えはノーだ。今君達も見ただろう?こんな非力な娘でさえ、彼らは殺そうとした。
だから僕は師父に託した『堕胎の聖母』の実験で復活者を人間に
コンバートさせる方法を探ったけれど、それも遅い。
でもね、僕ら復活者は決して人間を差別しないよ?」
リュシオン「何故言い切れる?」
ケイ「人間を復活者にする方法だけは確立されているからね。
人間は死ねば復活者になれる。」
ケイ「これで僕の話は終わり。リュシオンくん、最後にどうしても聞きたいことがあるんだ。」
リュシオン「?」
ケイ「嵐の海を往く蛙は、何故丘で溺れているの?」
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"命の輝き"の話をしていないので全部詭弁です。
こちらの流れから【illust/64701067】
イベント「暗闇の子供達」【illust/64642729】参加作品です。
お借りしましたリュシオン君【illust/63983075】
救罪者ナカヨシさん【illust/63982437】
鉤爪のエリー【illust/64688039】
敬虔たるケイ【illust/64006454】
何か問題があれば連絡お願いします。
2017-08-30 17:43:08 +0000