空に流れる川から、一部始終を見ていた。
綺麗な花はもう枯れていて、僕が降りてくる頃には彼はそれに火を着けていた。
リリプータ「アスカはこれでよかったの?」
アスカ「良いも悪いも特に無ぇな」
リリプータ「生きてほしいと思っていたんだと、思ったよ」
アスカ「そんなもの、本当は生きたいと思っていたやつ以外にゃ意味無いさ。治る気の無い患者にどう医者が手を尽くそうが無駄っていうのと同じこと。仮にこの槍が死者を正常に生者に出来たとして、きっと自殺するだろう。ここに一人一人に熱心に向き合える心の医者なんて居ない。それに、相手がどうしようもない悪人でもなけりゃ、死にたいやつを無理矢理生かす刑なんてやるものか」
リリプータ「でも、キミは動いたじゃないか」
アスカ「望まない姿で居続けさせない程度しかしちゃいない」
リリプータ「ああ、そっか・・・ゆっくり眠れそうだね」
アスカ「いやいや、未だだ。今この状況この戦地に遺体が野ざらしなんだぜ? 寝直したってのに、ほんのちょっとで叩き起こされちまう。全部燃えたら灰を回収して・・・俺の実家にでも暫く置くかな。あそこに自由に行ける奴なんて、あそこで生まれた奴くらいだ」
リリプータ「落ち着いたら・・・灰はどうする? どこかの花畑に撒いていくの?」
アスカ「あー・・・名前なんて俺、知らないしな。そうするか・・・。次の夢(らいせ)は花にでもなるのかねえ・・・」
リリプータ「綺麗過ぎて、直ぐに手折られちゃったりしないかな」
アスカ「そうだとしても、花は大して気にしやしないだろうよ。蕾が開く頃には既に晩年に差し掛かる。人間であれば年寄りが老衰を迎えるか災害で死ぬかの違いにしか思わないさ」
リリプータ「それもそうだね」
燃える茨の山に向き直って、全てが灰になるのをまた眺めた。
炎の中で影になった茨の棘が、沢山の糸車のように見える。
そういえば昔に読んだ本の中で、お姫様を呪いで死なせないために、国中の糸車を集めて燃やしたという一文を見た気がした。
・・・ああ、そうか。彼女の側には、死の呪いを上手く書き換えられる魔法使いは居なかったんだ。
これはただ、それだけのお話。
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【要約】
ご遺体(灰に加工)は保護しておくのでゆっくりお休みください。
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こちらに対して【illust/64688565】
■自キャラの狐とウサギ【illust/63983977】
2017-08-30 09:20:02 +0000