金魚救い・ふたつめ【illust/62991598】
「あの日を思い出すよ。君と出会ったあの夜を」
▣神楽坂 鈴彦(かぐらざか すずひこ)
▣年齢:27歳/身長:176cm
▣三年前【illust/44424125】
❖❖大切な金魚
雪歌ちゃん(雪歌)【illust/64503073】/三年前【illust/44584006】
「ええ、本当?雪歌一人でご飯作れる?確かに徐々に出来るようになってきてるけど…
やっぱり俺も手伝おうか?…だ、大丈夫かな」
「そう?…そっか。雪歌にはそう見えてるんだね。嬉しいよ。
…そう言えば、もう海の歌とかは教えてたっけ?うん、君なら気に入るんじゃないかな」
今自分が撮っている『世界』を見つめ直す。
切り取るのは海、川、湖。どれも少女に影響されたものばかり。
昔と違って仕事の関係で遠くへ出掛ける事も増え、彼女と一緒にいる時間も以前より少ない。
身体の弱い彼女を置いて暫く家を空けるのは、何度だって慣れやしない。
カメラ越しに『世界』を写し撮ろうとしても。
常の癖でふとした時に傍らに言葉を投げかけて、いない事に気付いた時も。
いつも聴こえる筈の口遊む歌声に、幾つもの季節を共に迎えた彼女の存在は、
自分にとっては掛け替えのない者になっていた。
「ただいま、雪歌。ご飯きちんと食べてた?…写真ね、満足いくもの撮れたよ。
現像したら見せてあげるね」
「君の歌が聴こえないと、何だか落ち着かなかったんだ」
三年前、金魚であった彼女を掬い取った理由は分からなかった。
けれど今なら。
「救われてたのは、きっと俺だった。君と出会ったのは偶然なんかじゃないんだ」
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2017-08-19 03:50:21 +0000