※長い上に陰気なのでキャプションはお時間ある方だけどうぞ※
昔々、というほど昔ではないかもしれない昔。
とある貧乏貴族の家に、やせっぽっちの娘がいました。娘は厳格な両親の機嫌を損ねないよう、朝晩のお祈りの他はひたすら針を動かして暮らしていました。それでも、うっかり祈りの文句を飛ばしたり、売り物にならないような出来の悪い刺繍をしてしまった日には鞭打ちが待っていましたから、娘は野鼠のように用心深く育ちました。
娘は隙間風の吹く屋敷で凍えて眠れない夜にはこう考えるようにしていました。いずれ家を出て結婚すれば解放されるのだと。娘の許嫁は金持ちの商人でした。許嫁のことはこれといって好きなわけではありませんでしたが、気まぐれでも微笑んでくれれば両親よりはずっと素敵に思えました。
しかし、やがて嫁いだ日に告げられたのは幾人かの愛人の存在と、貴族の身分を手に入れれば娘はいらないのだという話でした。娘は少しだけ泣いて、こう考えることにしました。いずれ子供でがきれば寂しくはないだろうと。それなのに、数年してやっとできた子供も娘に微笑みかける前に逝ってしまい、娘はもう何を希望に思ったらいいかわからなくなってしまいました。
それからしばらくして娘の住んでいる国で革命が起こりました。娘の夫は革命で倒された王とは随分色々な取引をしていたので、すぐに国外に逃げ出そうとしましたが、結局捕まって一族全員が縛り首にされることになりました。
隣で泣き叫ぶ夫や両親をぼんやり眺めながら娘は考えました。死んだら神様に会えるのだろうかと。幼い日に冷たい床で跪いて祈ったことを思い出し、神様ならなんとかしてくれるのではないかと考えました。何をなんとしてくれるのか何とかして欲しいのかはもうよくわかりませんでしたが、首に縄が巻かれ、それが引かれる瞬間までとりあえず小さく祈りの言葉を唱え続けました。
「だけど、ついに神様にはお目にかかりませんでした。え、ええ…まさか死んでまで絶望する羽目になるとは。でも、もういいんです。私、これからは自分の力で幸せになるって決めたんです。だから、あの、すみません。死んでもらっていいですか?」
◇ペル
アルジャ王国の貴族の娘。昨今流行りの復活者として蘇った。いわゆるモブだが、ビギナーズラックで倒した兵士の能力を吸収しているため、見かけに反して戦闘能力はそこそこ高め。自国に未練がないのでなるべく戦地から離れようとはしているが、行く先々で復活者狩りに遭遇するので、見かけで油断する相手をだまし討ちしながら逃げ回っている。夢は田舎の小さくて感じがいい家を借りて猫を飼って暮らすこと。
◇かっこいいロゴお借りしました!ありがとうございます!【illust/63981186】
◇保留派タグお借りしてます。できれば戦わずして安らかに暮らしたい復活者。【illust/64417500】
◇pixivファンタジア RotD【illust/63981060】
第一章「亡国の復活者」【illust/64006519】
なんだか殴りにくい感じになっちゃいましたが殴ってもいいのよ。
2017-07-31 15:06:16 +0000