【九十九路】.死霊座標X【最終期】


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 九十九路の羅針盤 -the compass of “99” Roads-illust/60865485

◇羅針盤が指し示すは明星
  《 .[ドット・ポイント]-死霊座標X 》
     < 黒薔薇の者 > ――そうしの のえ
 [500pt]▷[強靭:500/知能:0/器用:0/機敏:0/幸運:0]

 彼[illust/63163649]ならばもういない。
 

◇<面影>新生騎士団ソロルリリス:illust/64050587
 「このうた? これは、……? さあ、なんだったのかな…」
 

絆:廃城の薔薇園 「庭さま[illust/64038741]

 私は遠く、流されて、流されて、辿り着いたのは血の花の牢獄だったのだろう。
 多くを殺めて尚、手折られず、行き着いてははらからの庭。
 倒れこむように身を小さくうずくめ、ようやくの揺籃と眠りに落ちた。
 久しく知らぬ母の腕にさえ思えた。――迎えに来てくれたんだね。

「ごっ、ごめんなさい、ここ、あなたのお庭ですか。人がいると思わなくて」
「ここはお腹が空かなくて、すみません。すぐに出ていきます」

「わたし? 私は……なんだったろう、擦り切れてしまったようにも思うけど、
 ……ええと、そう、nuit。夜の薔薇と仰った人がいました」
「あれ、……そういえばいま、私に障りませんでしたか」
 
 ここが夢のあとの名残というなら、私は閉じられた奥地からの風花だろうか。
 なにかから取り残された。
 花のさだめとでも言いたいのだろうに、それでも我らは枯れることをも許されないのだから、
 ひどく寂しくなって――、

 ふと、惑った。
 まちがいをおかしてみたくなった。

「あのう。い、いいんでしょうか。いえ、ありがとうございます、温かいです……けど、
 えっ、味。 味は、良し悪しをよく知りませんが――でも、この味を私の「美味しい」にしようかな」
「うん。「美味しい」です、とっても」

 ふわりと綻んだ。まるで無害な花弁を繕って、随分と精巧な飯事を仕立て上げてみせた。

「こんな、初めてで。ごめんなさい、よくないって、わかってはいるんですけど」
「ああだけど、どうしよう。とても卑しいことが言いたくて」

「ここの花の一つと数えてくださいますか」
「お邪魔がひどければ、間引いていただいて構いませんから」

 仮初めのお慈悲を戴いて、一寸、このひとを共犯者に落としてしまおうと。

  [:断片:]

「こんにちは。……もしかして、探しましたか。いえ、ずっとここにいたんですよ」
 :茂みから突然顔を出したから驚かせてしまった。涼やかな顔をした人だけど、呆けた顔もするんだな。

「そういえば昨晩、お城への抜け穴を見つけたんです、長雨の日にはいいかなって。行ってみますか」
 :ふたりで少しだけ探検をした。
  あったかもしれない物語を辿りつつ笑い合っていると時間を忘れる。またお仕事の邪魔しちゃったかな。

「……いきましたか。ああ、よかった。今日こそはだめかと思いましたね」
 :おとなをまいては声を潜めて笑いあった。いたずらに成功したような、かすかな悦びが心地よかった。

「ここのおとぎ話に出てくるのは吸血鬼でしたか。ああ、それで……あ、いえ、なんでもないんです」
 :時折ここの薔薇(ねえさまがた)は断片的に何かを嘆くことがある。
  言葉になりきれない鉄錆びた断章は、時折私をひどく心細く、そして懐かしくさせる。

「ごめんなさい、こんなつもりじゃなくて、上手くできると、ほんとうに、どうお詫びしたら……」
 :いつもしてもらってばかりだからと真似をしようとして、紅茶の缶をひとつダメにしてしまった。
  長いあいだ幸せな夢を見ていたから、「ふつう」であるように錯覚した。
  この花園の中でも、茶葉の熟れ腐った臭いが私にはひときわ強く感じられた。

「吸血鬼の住まう城に、私のような命を喰らう化物が訪れることは、いつかの必然だったのでしょう。
 知っていたんです。私のいくつかの『抱擁』は、孤独を慰めるために行われながらもその実、
 私の孤独を浮き彫りにさせるものでしかなかったんだって。知っていました」
「どうか触らないでください」
「『家族』はもう諦めています。でも、なら、せめて、あなたは」
 :或いは、間引いてくれることを夢想した日もあった。
  けれども、彼が私の唯一であったとて、私が彼の唯一だと嘯けるだろうか?
 :孤独な私を失くしたとき、彼が本当の孤独でなければ、私は得心がいかないと確信した。

 :中途半端な爪痕しか残せないというなら、私はどうぞ生き汚く蔓延って、彼を閉じ込めてしまいたかった。

  :茨は伸びる。際限なく。
   :どこまでいけば?

  :私達の道の帰結点は、ここに定めましょう。
       :そうしましょう。
     :それがいいわ。
            :お父様もお喜びになる。

 
「ね、こっち! はやくはやく」
「このお茶、僕の好きなやつです。はじめましての時もこれでしたよね」
「美味しい」

「……いや、待てよ、そもそもはじめましての挨拶なんて、思い返せば僕らしませんでしたね」

「じゃあ」
「えーと、はじめまして。こんにちは。 …お名前を伺っても?」



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  種族設定をお借りしました、ソロルリリスの姉妹たち/海賀さま。
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2017-07-25 14:56:42 +0000