素敵な企画元様:金魚救い・ふたつめ【illust/62991598】
事前関係で参加させていただきます。
宜しくお願いします。
◆珀(はく)
(見かけ年齢)25歳/178㎝/種類:茶金/性別:♂
※※※※※※※※※※※※
飼い主さん:六角敬次さん【illust/63836283】
ゆらりゆらり水面が揺れる。
透明な天井を揺らめかせながら響くのは、祭りの喧騒。
けれど「ここ」はいつもとても静かだ。
分厚い硝子の壁に囲われた、小さな小さな俺の世界。
赤に青に橙に。時に金に色を変え、ビニールの天井から吊り下げられた照明が世界を貫く。
ゆらゆら、ひらひら、金茶に揺れて水に溶ける自慢の尾鰭をくゆらせて、歪んだ世界を見る。
屈折しながら世界を射貫く色とりどりの光が、不意に翳った。
「綺麗な金魚達だな。俺にも一匹貰えるかい?」
低く静かに響く音。
見上げた世界に映る、ほんの少し痩せて草臥れた、男がじっと俺を見ていた。
はーい俺金魚。
おおよそ100年以上生きてるけど、俺金魚。
祭りで売ってる金魚って数年で昇天しちゃったりするけど、たまに居るよね。
ものすっごく長生きする金魚!
しかも俺ってばヒトに化けちゃったりするんだ!
どうやって?いやいやそこは突っ込んじゃだめだぞ。
世界は不思議に満ちているんだ!
「といっても何ができるってわけじゃないんだけどねー」
あははと笑いながら部屋の中を歩き回る。もちろんお供は掃除機君だ。
いやー現代って便利だね!一昔前は箒で床吐いて雑巾がけ必須だったりしたんだけど、今ってば掃除機で拭き掃除までできちゃうんだもん!いやー便利便利。腰がやられなくてありがたいわー
え?金魚が何してるって?
お掃除でーす。
でもこの部屋余計なものがほっとんどなくて、すぐ掃除終わっちゃうんだよね。
これ終わったら冷蔵庫の中のはまちの短冊お刺身にして、サトイモと干ししいたけあったからお煮物でも作ろうかな。
いえー家事全般こなしちゃう系金魚でっす!
長く生きてるとさー飼い主さんも何人か居たりするんだけども。中には人になった俺の姿見て腰ぬかしてくれちゃったり、化け物扱いして金魚屋へ返品してくれちゃったりしたんだけど、どうも今回の飼い主さんは違うらしい。
「……そうか。最近やたら部屋が綺麗だし、いつのまにか冷蔵庫に一品増えてると思ってたが、お前だったか」
なんて一人合点がいったように頷いただけで、その後ごくごく普通に同居状態になったからね。
肝が据わっているのか、拘りが無いのか。
やたら飄々としてると思ったら、いきなり
「お前が居てくれて良かった。一人なんてのは寂しくてかなわない」
とか言っちゃうもんだから、なんかこう放っておけなくなるんだよな…
俺達人になれる金魚の対価は、飼い主になる人間の「大切なもの」。
俺への代金として金魚屋へ支払ったのは、プラチナの指輪。
少し古いデザインのそれを、大事そうに一度撫で、彼はそれを差し出した。
サイズからして女性ものだと思うんだよね。死に別れたか、破綻したのかはまだ聞いてない。
ヒトの心は脆くて、とても脆くて。
下手に踏み込めば薄ガラスのほうにぺきりと折れてしまうから。
だけど、いつか聞けるといいなあ。
知りたいと思うのは、ほんの少し俺が君に近づいたから?
穏やかに、けれど薄く影のさした笑顔がいいなと思う。
「花火は好きかい?」
嫌いじゃあない。
けれど「何を見るか」は俺にはさほど問題じゃなく「誰と見るか」が大事なわけで。
藍色の空に弾ける光の粒は、いつ見ても綺麗だけれど、隣に居るのは君がいい。
「まあ、今のところ俺の行動範囲はこのうちの中くらいなんだけど!」
家事特化型金魚の俺は、まだ一人で遠くまで出歩けない。
君は意外と寂しがり屋だから、いまはこれでちょうど良い。
けれど君が望むなら、金魚根性振り絞ってお散歩行ける程度には歩けるように頑張るから!
「いつか、並んで花火見れると良いなあ」
ヒトには家が必要だから。
せめて今は君が、この部屋で心地よく過ごせるよう。
「今日も家事に精出しますか!」
ちなみに今日のご飯も上出来だったらしく、彼からは
「珀の料理は美味いな、天下一品じゃねぇの。」
と、最大の誉め言葉をいただきました。
あざっす!明日も頑張ります!
「俺多分まだまだ死なないし、金魚だから一人でどっかに行けないし」
「君が望むなら、息を引き取るその瞬間まで、ここに居るよ」
だから
「いつか花火、見に行こうね。でっかい弁当持ってさ!」
※キャプション随時編集
交流は多分できないと思います。それでも良ければモブ等ご自由に。
衣装の柄にフリー素材【illust/54267055】お借りしています。
2017-07-12 13:34:48 +0000