てふ[illust/62991598]…金魚救いふたつめ
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「共に生きよう、小春」
： 寿柳 龍一 -すやなぎ りゅういち- / 男 / 華道家
…物腰柔らかく幸薄そうな元病人です。
摘出は不可能だと言われる程心臓に絡まった腫瘍。
病のみが自分の魅力と無意識のうちに大事にしてました。
…すっかり健康になってしまったけれども、
まさか健康になった瞬間見合い話が全部消えるなんて…
ああ、一緒に居てくれるこの金魚が嫁になってくれたら。
こんなにも愛おしくて可愛らしいのに――……
…――あれ、金魚が居ない…え⁉ に、人間⁉
： 金魚様
…素敵な金魚さんを救わせて頂きました。
隣で共に生きていてほしいと願う金魚ちゃん【illust/63768794】… 小春
「ああ、なんて綺麗なんだ…どの金魚よりも、一等美しいね。
そうだ、名前をつけないといけないな…どんな名前にしようか」
祭りの際に買った一匹の金魚。
目が見えず傷だらけだと店主に言われたその子は、どこか私と似ているようで。
祭囃子が鳴り響く中、そっと両手で包み込み家に帰ったんだ。
「来年の春も君と過ごせるように願いを込めて…小春、そう呼ばせてくれ」
「小春、小春。一緒に長生きできたらいいね。もしそうでなくとも……
……いや、変な事を言うのはやめようか。でももし、叶うなら、せめて来年まで……」
「また見合い話だよ。ねえ小春、もし君が私の家内になってくれたらどんなに好いか。
どこぞの金や家督目当ての女より、純粋に愛おしく思う君が私の隣で生きてくれたら幸せなのに」
そして一夜経ち。
寝て起きて、またいつもと同じ一日を過ごすのだと思ったら。
「や…病が、治ってしまった？ いやまさかそんな……」
「ああ小春…どうすればいいんだ、私は傲慢だったんだ、病にうかれて強気になっていたんだ…
自分の病が治った、それだけでとても不安に駆られてしまう、私には、病しかないのに」
「……いや、こんなことではいけないな。例え病があろうとなかろうと小春、君が居るんだ。
私がしっかりとしなければいけないよね。君も共に長生きが出来るように」
「………………………、小春？」
共に生きたいという願いが強すぎたせいなのだろうか。
「世の中には面白い事もあるんだね、大丈夫かい、小春」
人の姿になった君に、全てを捧げてもっと幸せに生きれるように。
「小春、聞いてごらん。鳥が鳴いている…よく庭に集まるんだ」
「小春、部屋にいてはつまらないだろう。縁側に行こう。私に腕を回して…そう、いい子だ」
「小春、物は食べられるかい？ かき氷を買ってきたんだ。一緒に食べよう」
「小春、怖がらないで、ただの布団だ。私と共に寝るのは嫌かい？」
…―――小春、君をとても愛おしく思う。
「お願いだから、私の大事な人を殺さないでくれ。死にたいだなんて言わないで」
「君が隣に居るだけでとても幸せだ――だから、君も」
共に幸せになってくれ。
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2017-07-12 04:19:02 +0000