九十九路の羅針盤【id=60865485】
❖名前:ティネン・A・エルデフォール / 158cm
❖婚姻と共に蜜という存在にして頂く素敵な絆を結んで頂きました(5/27)
豊穣の大地 エレツィオーネ:セフィーロ・レコルトさん【illust/62827797】
今日も上手く笑う事の出来ないまま、焼きたての香りを漂わせながら、パンを一つ一つ並べていると一人、お客さんが来た。
食べてもらって嬉しいのに、美味しいといってくれて嬉しいのに人のように上手に笑う事のできない私はやっぱり心が無いのだと思う。
色んな種類のあるパンの中から甘いパンを選んでパクリと頬張ってくれた人に声をかけてみた。
「甘いパン、好きなの? こっちのパンも甘いの。食べてみる?」
苺のたっぷり入った果実パンはママとお母さまから教わった事。
色んな種類のパンを知っているのは、作れるのはお姉ちゃんが旅先で食べたパンをレシピにしてくれているからという事。
一人でパン屋さんを営んでいる事。
話す合間にパンを、美味しい水を渡せば、また美味しそうに美味しいと大きく頷いてくれて、貴方は私の話を聞いてくれた。
――――
護衛をしてくれると言ってくれた。
花戦ではあるけど、戦ったことなんてなくて、私はただ、パンを焼く事しか出来ないから申し出を受け入れることにした。
移動式パン屋さんの中は魔法で形成されていて、一部屋増やすなんて簡単で。
「一緒に住む? お部屋作るの簡単。報酬はパンと…はい、これお金」
パンは美味しそうに嬉しそうに受け取ってくれるのにお金はどんなに言っても受け取らないと分かり、
パンは受け取ってくれるからと、美味しいパンを作る為の材料費に使うことにした。
護衛として傍にいるなら、手伝いもと当たり前のように店先で声をかけ始める貴方を見ながら、
焼きたてのパンをかご一杯に持っていけば、私の事をなんだか、褒めてくれているみたいで、なんだろう。
……なんだろう、焼きたてのパンみたいに暖かくなる。
心を持ってる貴方の言葉に、沢山の人が沢山パンを買ってくれて、美味しいって笑顔を向けてる。
一人だったころは美味しいって言ってくれたけど、こんなにも沢山の人から笑顔を貰ったことはなくて。
心が無い私には出来なかった事をしている貴方が眩しくて、きらきらしてるのが羨ましくて。
心が無いからかな。
貴方が沢山の人に囲まれて、色んな人と話している所をみると……なんだか、いやな、きもち……。
――――
〝蜜〟という存在の話を聞いた。
蜜と聞いて、私は果実であり花戦だから、武器でもあるけど植物でもあるからと、蜜があるかもしれないと伝えてみれば、
「…ちが、う? …………ま、まちがえた」
それは違うと分かりやすく説明されてそんな存在に私がなれたらいいのに、
なんて思って、考えだした時に〝蜜〟になってと言われて顔が熱くなった気がした。
「セフィーロの、蜜に私はなれる…? セフィーロの蜜に、して、くれる?」
身体を潤す美味しい水が染みわたるように、あったかい焼きたての香りと美味しいパンを頬張った時のように、
〝蜜〟になれた時の気持ちは、ふわふわと私を舞い上がらせるようで……。
私は自然と笑みを浮かべていたらしい。
――――
国から通ってくれてる貴方の国の話を聞いて貴方の国だからかもしれない。
店じまいの後国へと戻る貴方をみて、締め付けられるような枯れるような気持になった貴方の国、とても気になっていた。
小高い丘、緑に囲まれて新鮮な緑の香りを胸いっぱいに吸い込んで、大きな湖に目を向ければ喉が渇きを感じて、分かった。
ここは、私の眠る場所。
「ここで、私は眠るの。貴方の傍で、この眠る場所で私はセフィーロと一緒にいたい。
ね、私、笑ってる? 嬉しいの、うん。これが嬉しいって気持ちってわかるの。
沢山の人にもパンを食べて欲しいけど、貴方の為のパンも焼いていきたい…。
心を込めてセフィーロが美味しいって言ってくれる甘い、セフィーロだけの特別なパンを焼きたい。
私、貴方に心を貰ったの。セフィーロ、すき。貴方の蜜になれてね、貴方の国にこれて、嬉しいの! セフィーロ!」
感情に素直に気持ちを伝えてくれる貴方と一緒にいたからこそ、私は心を宿せて、私も素直に貴方に言葉を伝えられる。
――――
男女両方の姿があると教えてくれた時の事を思い出し、笑みを浮かべた。
なんとも人のようだと心を宿した私は今日も心を込めてパンを作る。
お仕事で貴方が傍にいない、そんな考えなんて吹き飛ぶくらい美味しいパンを焼きあげていく。
「今日のおすすめはこれ。こっちはちょっと甘いパン。こっちは…あ、セフィーロ!
お仕事お疲れ様、おかえりなさい、寂しかったけど沢山の人に美味しいって言ってもらえたし、
おすすめのパンも沢山買ってもらえたの。セフィーロみたいに上手く接客出来るようになれて嬉しい…」
「甘い、セフィーロだけの特別なパン作ってあるの。食べて、その後は蜜にする…?」
エレツィオーネ国のお水は冷たくて美味しくて、そのお水を使って心を込めて作るパンは美味しいと評判で。
幸せの味がするかはもうわかってるの。
幸せだと言ってくれる貴方がいるから、私も幸せで、幸せパン屋さんになれたの。
ありがとう、心をくれて、貴方だけの蜜で幸せなの。だいすき、セフィーロ。
❖前世代絆
ママ:エリン【id=62188262】
「ママの焼いたパンは美味しくて、美味しいだけじゃないのがわかるの。
それが何か私も分かればママみたいなパン…沢山食べてもらえるかな……?」
お母さま:白百合のハルバードタレイア・エルデフォールさん【illust/62260401】
「お母さまがママと一緒にいる時の笑った顔見ると、なんだかパンを焼いたときみたいに暖かい気持ちになるの。
ねぇ、お母さまが心を宿した時の話聞きたい。ママの焼きたてのパン持ってくるから、お願いお母さま」
姉:“赤ずきん”猟銃のルピナス ガラテイア・エルデフォールさん【illust/62886320】
「ガラテイアお姉ちゃん……。もぅ……そんな顔しないでガリーお姉ちゃん。悪いおおかみさんとの戦いは順調?」
「新作、作ってみたの。ママとお母さまが一緒に作ったパンにはかなわないけど、美味しいと思う…どう?」
「ガリーお姉ちゃんはちゃんと人だと思うの。私よりもずっと、ずっとひとだよお姉ちゃん…」
❖設定
情景を抱きし果実【illust/61244182】
花戦(カセン)【illust/61214323】
2017-05-14 03:36:02 +0000