「き、気にせんといて。ちょっとぶつけてん。大丈夫やから……」
彼女とは特に仲がいいというわけではなかった。家が通学路の途中に有ったので、時折プリントを届けるよう頼まれたというだけだ。その程度の関係だった。彼女は小学校の時は目立つほうではなかったが、地域のポートボールも頑張っていたし、友達もそれなりにいたようだ。中学2年生の春、交通事故で両親を亡くし、それ以来唯一の親戚という叔父さんと暮らしていたという。
―ドラマ「僕と同棲しませんか?」今夜9時から放送。お楽しみに~!
そのころからよく怪我をしてくるようになった。本人はぶつけた、転んだとしか言わないが察しはついた。でも特に深入りはしなかった。その程度の関係だった。他の人も何も言わなかった。二学期になると学校に来なくなった。時折プリントを持って行ったが、やがて僕も受験で忙しくなり、それもしなくなった。
―岸和多南店グランドオープン!開店記念セール実施中!
高校に進学してからはそんなこともほとんど忘れていた。日々の高校生活。友達もできた。部活にも入った。風の噂に叔父さんの郷里である東京のほうに移ったと聞いたがそれだけだ。中学からの友達と会っても特に話題には上らない。その程度の関係だった。
―6時のニュースです。先月東京都六王子市の山中で発見された若い女性の遺体について、警視庁は今日、身元を……
※実在の人物・団体・事件とは関係ありません
2017-05-01 12:12:30 +0000