【九十九路】ゼーニャ【第三期】

にーよ
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◇ 九十九路の羅針盤 illust/60865485

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 「ああ、必ずまた会おう。その日まで決して俺も君を忘れない。
  全てを思い出した時、君に礼を言いに来よう。それまで礼の言葉はとっておくことにする。
  その時には俺の話も聞いてほしい。俺が何であったのか、その答えを。」


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✧素敵な絆を結んで頂きました!(2017.04.22)

 愛しき理想郷クアドリウィウム/アルコーン様【illust/62455960

ヴァルクガルドを旅立ち、どれだけの時が過ぎたのだろう。
アリアや彼の国から得た知識や情報を元に、手掛かりを求め歩き続けてきた。
しかし、ここ最近は進展があるどころか、砂を掴むような有様だった。
これならと思うものがあっても、深く探れば探るほど糸は繋がらない。
まるで何かに邪魔をされているようだった。

憂鬱とする気持ちを晴らすように、彼女の事を思い出す。
彼女と過ごした日々に戻りたくないのかと言われれば、素直に首を横に振ることはできない。
けれど、自分の成すべきことをせねば、合わせる顔もない。

彼女のことを思い出していたからだろうか。
ふと目の前を過ぎ去った、白い髪の子供を自然と目で追ってしまう。
髪だけでなく服も肌も真白な子供は、立ち止まりこちらに向かってにこりと笑いかけた。

*

「遺伝子?」

その少年の話をどうにか噛み砕いた結果、生き物の身体に刻まれたコードのようなもののことらしい。
それは種や、性別、そして血縁関係によって特有のものを持つのだとも。

「俺自身を手掛かりに探すのはもう限界かと思っていたが、そんな方法があるのだな。
 正直行き詰まっていたところだった。どうか君の国の力を借りられないだろうか。」

先程とまったく変わらぬ笑顔の子供は、その魔石のような目を細めて言った。
「ようこそクアドリウィウムへ」と。

そして俺はあの国へと足を踏み入れた。

*

「アルコーンか。俺はゼーニャという。君には世話になった。
 ・・・いや、これからも世話になるな。よろしく頼む。」

少年の名はアルコーンといい、この国では特別な存在のようだ。
親身になり父の手掛かりを探してくれる彼に、俺は今までのことを少しずつ話した。
旅に出た時のこと、今持ちうる手掛かり、そして彼女との日々と「約束」。

話を聞いてくれていたアルコーンは、いつものように笑顔だったが、
「約束」の話をした時、何故だか初めて"違和感"を感じなかったのをよく覚えている。
彼は常に笑顔だが、それと同時に違和感が拭えなかった。それはこの国もだ。

雪のようなそれは冷たくも積もりもせず、地に吸い込まれていく。
気候に大きな変化のないの国はいくつか通ってきたが、まとわりつく生ぬるさが肌を撫でるような、この国特有の感覚は未だになれない。
真白な民たちが硝子を食らう様も美しいようで、恐ろしい。言い知れぬ違和感が常についてまわるのだ。

黙り込んでしまった彼を気遣えば、何事もなかったのように笑顔をつくり去っていく。

「・・・君は、この国は、一体なんなんだ。アルコーン。」

*

「これは・・・?」

アルコーンに渡されたのは今まで調べてきた、俺の遺伝子の資料だった。
これを持って早急に国を去れという。
もともと一方的に世話になっていた身だ。去れと言われれば去る。
しかし異様なまでに静かな彼の姿に、何も感じぬほど鈍くもない。

「待ってくれ、アルコーン。何かあったのか。
 話を聞かせてくれ。君には世話になった。俺で力になれるのなら・・・アルコーン!」

何も言わぬ彼に、つい怒鳴るような声が出た。
けれど彼は怯まずに、俺の手を拒む。
そして、今までで一番穏やかな笑顔で言うのだ。はやく行け、と。

「・・・わかった。今すぐここを去ろう。
 けれど、ひとつだけ。君に何も礼をしないわけにはいかない。
 どうか君の力となるように。受け取ってくれないか。」

あの日、アリアと約束を交わした日。
過去の記憶から戻り目を覚ました後、生命の精霊は魔道具にはいなかった。
色を失った天球儀は静かに漂い、精霊は彼女の元にあった。ならばきっと。

「精霊よ、どうか彼の力に。」(俺のかわりに、アルコーンを頼む)

*

クアドリウィウムを逃げるように去り、数日、いや数週間かもしれない、幾ばくか時が経った。
あの日、アルコーンから渡された「父」の手掛かりを手に、俺は歩き続けている。

ふと視界に白がよぎった。は、と顔をあげても何もない。
気づけばろくに休まず、食べもせずだ。幻覚でもみたのだろうか。

息苦しさまで感じ始め、ゆっくりと息を吐きながら、上体を軽く倒せば何かがぽたりと地に落ちた。
じわりと地面に吸い込まれ、黒い点から小さな円と変わっていく。
雨かと空を見上げても、ただ青い空が広がるだけ。
つっと頬を伝う、あの国の風のような生温さ。触れた指先は濡れていた。

「くる、しい、」

指先を濡らしたものが何かもわからないまま、息苦しさを紛らわすように俺は座り込んだ。

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◆ 前期 >> ゼーニャ【illust/61965508】※続投
◇ 前期絆相手様 >> アリアナンナ様【illust/62021851
         「再会の約束」をいただき、「生命の加護」を受け取って頂きました。
◆ 絆相手様今期 >> アリアナンナ様【illust/62531304

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◇「ゼーニャ」(男性/181cm/一人称:俺/二人称:君、呼び捨て)

 <第三期>

 彼女の学院卒業を見届けてから数日後、長く世話になったヴァルクガルドを旅立ち、
 再び、父を探す一人きりの放浪の旅を送っている。
 ヴァルクガルド滞在時に魔法知識を学び、少しばかり扱いも覚えたことで、
 「力」に加え「智慧」の加護を得ている。
 加護は「一度見たものを正確に記憶できる」というもの。
 彼女と別れたあの日見えた記憶を頼りにしながら、
 魔道具や精霊に詳しい者を訪ね歩いている。

◆詳細は前期CSを御覧ください。

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絆について
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 九十九路の羅針盤、引き続き参加させて頂きます。よろしくお願い致します。
 もし不備・問題が御座いましたら、ご連絡頂けますと助かります。

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2017-04-19 12:15:22 +0000