【九十九路】サン・ヴィルセルマ帝国【第三期】

雛田
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九十九路の羅針盤【illust/60865485】へ引き続き参加させていただきます。

❖人種差別の国 サン・ヴィルセルマ帝国
明星の羅針盤/ポイント50(強靭:0 知能:10 器用:5 機敏:10 幸運:25)

国家詳細【novel/7768101

❖次期皇帝(仮)  リリアンナ・ルヴィエレセーレ
10歳 女  一人称:リリ 132cm

父(前期):セージュ【illust/61703357

「ぱぱに宣戦布告? …してはや3年、ぱぱを玉座からひきずりおろすには至らないのです」

「どうして、ぱぱはおしごとをするの??」

母(前期絆相手):マノン【illust/61690558

「ままは寂しくないの? ぱぱってば、いっつもおしごとばっかりなんだよ?」

「ねぇまま。リリにも、ままと同じちからがあるとおもう?」

姉:ラシェル【illust/62567832

「ふっふっふ…リリが皇帝になった暁にはおねーちゃんを騎士団長に任命します! これがリリのコーヤクってやつ???」

「むーー!!!おねーちゃんばっかりままのお菓子食べてずるい!!! ねえ、リリには!? リリの分はあるよね!?」

幼い皇女は父である皇帝に言いました。

「ぱぱのおしごとなんて、なくなっちゃえばいいのに」

すると、皇帝は笑いながらこう返します。

「じゃあ、リリが皇帝をするかい?」

皇女はその場の勢いで、首を縦に振ってしまいます。

「でも、リリはまだ小さいから、大人になったらぱぱのお仕事を奪おうね」

大人というのは嘘つきで、汚い生き物なので息を吐くように嘘をつきます。

皇帝は、皇女にその座を譲るつもりなど一切合切なかったのです。
それでも、幼い皇女に「次期皇帝(仮)」という特別な位を与えました。

その幼い皇女がリリアンナ・ルヴィエレセーレ。
何の秘密もない、20代皇帝(仮)です。
決して皇帝のように賢くはないが、がんばりやで人を信じられる素直な性格は彼女の強みでしょう。
最近では短期留学として外国へ赴くことも多いようです。

❖種族リンク
人間と何かの混血(当方)【illust/61214370
蔓の子【illust/61349964
ラピスラズリ・ラパン【illust/61690558

素敵な絆を結んでいただけました!

パントルさん【illust/62438737

少女が訪れたのは、少女の国にはないもので溢れた島国。

芸術という文化は、サン・ヴィルセルマ帝国にはないものでした。
何せ、「芸術家」という職業は国に認められていなかったのだから。

少女は「夜はきちんと寝なさい」という父の教えを忘れて、連日貪るように劇場に足を運び、美術館をハシゴし、絵画を鑑賞しました。

その全てを「すごい!」と褒め称え、その全てに「すてき!」と恋をしました。

しかしそれは少女にとって未知の概念だったからでしょう。

ある日、少女は一つの絵画に見惚れます。
技術的には他の作品に劣っていましたが、不思議と少女の心を惹きつけたのです。

調べてみれば、描いたのは少女と同じ10歳の少年。
驚愕の事実を知り、少女はいてもたってもいられずに色紙片手に会いに行き、こう言いました。

「リリとお友達になって!!」と。

それが、私、リリアンナ・ルヴィエレセーレと彼、パントルとの出会いでした。
アルテオーロに滞在する間、私とパントルはそれは良いお友達でありました。
お互いの国の良いところなどを話し合ったり、年頃の子供らしく遊んだり。
そんな中で私はパントルに「いつか、リリの国のきゅーてーがかになって!」とお願いしました。
いつかきっと、と答えてくれた彼の顔はとても優しかった。

それから間も無く私はサン・ヴィルセルマ帝国に戻り、また別の国へ行くことになります。

たくさんの国を見て、たくさんのキラキラに触れて、時に残酷なものを目に写しながらも、私は大人になりました。

アルテオーロの芸術を忘れたことはありませんが、大切なものを私は忘れていました。

パントルを宮廷画家として、招くという約束を。

思い出したのは、些細なきっかけ。
新聞で立派になった彼の個展が開かれることを知った時。

私は全ての公務を投げ出して、あの海に囲まれた芸術の国へ行きます。
あとでこっぴどくお父様に怒られてしまうのはわかっていましたが、久しぶりにワクワクしていたのです。

そして、あの時と同じように色紙を携えて私は彼に言いました。

「私と、もう一度お友達になってくださる?」

「そして、私の絵を描いて欲しいの。サン・ヴィルセルマ帝国の宮廷画家として!!」

きっと、恋をしていたのでしょう。
彼と彼の作品に。

彼の作品をもっとたくさんの人に知ってもらいたい。

それから、この国に生まれてくる芸術家たちを彼と一緒に支援する立場になりたい。

彼は光なのだ、この国の芸術家にとっての。
だから、私は彼に新たな名前をさしあげたのです。

ルシアン、と。

同時期に私は「次期皇帝」という立場を返上しました。
父はこの結果を見越していたのでしょうか、何も言いませんでした。

私はもう、立ち止まりません。
きっと絶望は光によって救われるのですから。



私は皇女として、様々な国を見た。

キラキラしたものもたくさん見た。

それ以上に残酷なものも嫌という程見てしまった。

理不尽な理由で殺される者、不当に差別を受ける者、同じ国の民でありながら権力を求めて殺しあう者。

それらを俯瞰し、意味を見出して「素晴らしい」と、うわべだけで褒めるのはもう疲れてしまった。

だけど、どんなに血塗れの国でもこの国をには及ばない。

私も、お父様も屍の上で踊るだけ。
この国の過去なんて、知らない方が良かった。
だって絶望するだけなんだもの。

だからね、キラキラしたもので私を満たして。
美しいもので、この醜悪な国を包んで。

約束よ、ルシアン。

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2017-04-02 16:42:38 +0000