気温、風向き、転向力・・・狙撃の上で考慮する要素は多い。
ほんの少しの読み違えがミスショットの原因となる。
だが私は外す気がしない、まるで標的のすぐ後ろに居るかのように感じているからだ。
ゆっくりと、慎重に弾丸を装填する。
この為に準備した特別製の弾丸は、先の休み時間にふたばに頼んで作ってもらってあった。
一枚のノートの切れ端は強烈な握力によって驚くほど小さく、硬く錬成されていた。
「一撃必殺(ワンショット・ワンキル)」それを確実に遂行するためだけに。
その時、標的がソワソワし始めた。
退屈な授業に痺れを切らしたに違いない・・・そろそろ頃合か。
ゆっくりと息を吐いて、停める。
「むふぅ」と息をすれば肩が上下し、これもまた着弾を乱す原因となる。
無呼吸のまま、静かにトリガーに指をかける。
間もなく・・・この指で、標的の命を奪う。
もう今の私は三女と呼ばれた淑女ではない。
歴戦のスナイパー、ボブ・リー・スワガーか、トーマス・ベケットか。
今ならシモ・ヘイヘの顎だって撃ち抜いてみせる。
「・・・さあ、可愛い顔を見せてみろチェ・ホンマン。一弾で眠らせてノートを取らせてもらおうか。」
待ち焦がれたその瞬間・・・・・祝福の鐘・・・・いや・・・・チャイムが高らかに鳴り響いた。 日直は宮下。 神様なんていない。
2009-09-17 05:37:31 +0000