【九十九路】死にゆく火口・エデ【第一期】

熱子
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❖九十九路の羅針盤【illust/60865485】さま
開催おめでとうございます。参加させていただきます。

"死にゆく火口"エデ=ローメットバイト///国
「永劫の都」とも歌われた山間の国。今はその地に民はなく、かつての栄華は見る影もない。
竜の名を持つ山脈に佇む都は中心に火山である«竜の心臓»を擁し、火口を封ずるように築かれている。
└❖竜の心臓
 あらゆるものを燃やし尽くすこの世の業火。正しく"焚べる"ことで対象の存在のみならず、
それがあった記憶・記録までも消し去ることができる。
 旧きエデの民は燃え盛る炎の魔力を都の動力として利用していた。

エデ=ローメットバイト//王
 滅びた都の玉座に座る、国と同じ名を持つ少女。何百年と生き続け、その座を守っている。
 エデを未来永劫存在させることを使命だと考えているが、肉体はすでに限界に瀕しており、今は都と共に果てようとしている。

❖絆:黄金樹・ククノチさま【illust/61328717

 「都に灯るの道。終末の壁を燃やし、未来を照らす彼の方は、私の―いいえ。我等の“希望”に相違ない。」

≫終末より―on the “E-n-de”
何が国をつくるのか。王か、民か、地か、法か。
神より油注がれた時、その者自身が国となるのか。それとも地や民草を名で縛り、はじめて国と成れるのか。
そして、そのうちのどれを亡くした時に国は死ぬのであろうか?
 「…或いは、すべてを」
零れた呟きに久しく聞かぬ誰何の声がかかる。驚きに目を開くと、そこにいたのは色づく季節を持った不思議な旅人であった。
どうやら竜と眠りにつくには未だ早いらしい。ならば軋む身体でも精一杯にもてなそう。少しでも長く、この名が心に留まるように。
少しでも長く、永劫がつづくように。
>>>
旅人―ククノチ、と耳慣れない名を持つ彼―は永劫を無意味と嘲笑ったが、“エデ”はそう在れと望まれた姿で在るだけ。
それが私の存在する意味、それが私の使命。望まれた永劫を続けてゆく他に、一体何が必要だと言うのだろう?
―その何かが分らぬことが、なぜかとても気にかかった。
知らねばならぬ、と思う。私の言葉に表情を歪めた彼は、その答えを持っているだろうか。
「私は“エデ”。最後の民。末期の王。その名を冠する国そのもの。
 歓迎いたしましょう、旅の方。貴方が我が名を知る限り、私の永劫は生きるのですから。」


≫目覚め―germinated Ego
ククノチ様は、良く生きる方だ。見えて数日ではあるが、彼の目は常に先を映しており、足はその道の続きを疑いもしない。
何によって生きるのか、という問いに彼は好奇心、と答えた。
寄る辺は誰かに下されるものではなく、ただ身の内より出ずる熱量のままに生きるのみであると。
そも、私は自らのことなど考えたことなどもなかった。漫然と望まれるかたちであり続けてきた。
そう在れ、と望まれたのは“エデ”である。ではヒトとして形をもつ“私”は何を望むのか―?
>>>
私が“私”を見つけると同時に、目を閉ざしていた現実も押し寄せてくる。
私はエデそのもので、だけれども同時にそうではない。この身体が生きているからといって、私の国が続いているわけではないのだ。
永劫を謳いながら、真実、私は諦めていた。“エデ”は死んでしまったと知っていた。
城の窓から街を見下ろす―灰色に烟る町並み、足音の響かぬ路、かつて闇を照らした灯火は無く、冷え切った静寂を纏う都。
ここに在るのはかつての影だけ。いいえ、でも、未だ名があるのならば…
瞬いて踵を返す。あの人にも聞いていただこう。私は、使命ではなく、私のために、エデを生かすと。
眦より落ちた雫は、旧きエデの街へとかき消えて行った。
「“私”はもはやかつての“エデ”ではありません。貴方の求めた永劫の都は、かつて貴方の言ったとおりに死んでいた。
 無意味だと言われた訳も今ならよく分かります。かつての影に縋り、本質のない永劫ばかりを追いかけていたのですから。
 それでも…いいえ、だからこそ私は、エデを―“永劫”をもう一度取り戻したい。
 こう思えるようになったのもきっとククノチ様、貴方のおかげ。…竜の導きに感謝を。私のエデへの最後の旅人が貴方で良かった。
 貴方は本当に、この国のためにいらっしゃったのですね。」


≫炎へ―Palingenesy
衰えゆく竜の鼓動に彼が示した選択肢―燃え続ける炎、世界樹の枝。
「“薪”になろう」と彼は言った。
旧き永劫に、崩壊の足音は迫っている。迷っている余地などない。
…それでも、私の敬した生を、この方の旅路の果てを、私の我儘に決めてしまってよいのか。
この方の献身に見合うだけのものが、行く道の先にあるのか。
逡巡する私を見下ろす彼の瞳はしかし、変わらず“未来”を見つづけているようだった。
―逃げるべきではない。彼から、私から、未来から。
私が新しい永劫を求めると決めた。彼がそれを助けてくれると言う。ならば、私のとる道は、
「世界樹の枝、薪… それは…、
 いいえ、貴方の道は貴方が決めるべきこと。それが同じ道であることを、私は嬉しく思います。
 貴方が御身を捧げて下さると言うのなら、私もその火で燃えましょう。
 エデ«私»の灰から産まれる新たなエデ«未来»が―きっといつか新しき永劫を導くでしょう。」


///――かくして、亡国はその物語の幕を下ろす。
かつて続いた道は“過去”、ここに得た道は“希望”。
都に灯る炎は、世の果てより新しく伸びる道を照らし続けてゆく――///

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2017-02-05 15:08:48 +0000