九十九路の羅針盤【illust/60865485】様に参加させていただきます。
◆ディア -Dear-
中性/30代/168cm
ポイント:10pt 強靭:4知能:2器用:1機敏:3幸運:0
一人称:私 、二人称:お前、貴公
誰に対しても態度を変えず、何かに謙る事はしない性格。
我が道を往く振る舞いをする分、他者の思想に対しても寛容。
外見は女性に近いが、内面はどちらかというとやや男性的。
〈門〉から生まれた臣下を取り上げ、養育するのも役目である為面倒見はいい。
◆絆(2/4)
❤酒造ヒッポカムポス ヘリオス様【illust/61216680】
鉱山エリアの開発を行っていたディアは、度々鉱山夫から請願される食事の改善について頭を悩ませていた。
国内であれば食事が必要ない身である魔族にとっては、どうにも理解できない心理である。
早々に思考を放棄して要望を聞いて周ってみれば、何度も耳にする酒造の名があった。
曰く、一度飲めば忘れられない。それこそが酒造ヒッポカムポスの酒。
暗い顔していた鉱山夫達は、ヒッポカムポスの名を出せば一瞬で目の色を変える。
その反応に興味を惹かれたディアは、自ら商業国家ドレッドノートに向かった。
「邪魔するぞ。此処がヒッポカムポスで間違いないな?
私は小国フォーリンマージの者だ。ああ、知っているかどうかはこちらにとって重要じゃない。
早速用件から入らせてもらうが、この店の酒を売って欲しい」
「私は酒には――まあ食事全般だが、とにかく疎くてな。
相対的な値段でしか価値が分からん。それで、鉱山夫から最も称賛されていたこの店に来たのだが……、
貴公の酒の良さはこんな私でもよく理解できる。ついでに国でくたばっている連中の心境もな。
店主殿、今一度頼もう。ヒッポカムポスの酒を我が国に売ってくれないだろうか」
そうして話を取り付けてきた事を切っ掛けに、あっという間に商談はまとまった。
ヘリオスと名乗った店主がたくさんの商品を携えて国を訪れた約束の日、
出迎えたディアは案内をしつつ、相も変わらず太陽のような男だなとどこかで思う。
不思議なことに、酒場の惨状を目にした彼はむしろ目を輝かせているようにも見えた。
つくづく人間は分からない。だが、ディアは冷静に観察する一方で、彼が掲げた『楽園』にどんどん惹き込まれていくのだった。
人を集めた彼は小気味よく語りながら、手始めに酒を、次に食事を振る舞う。
その鮮やかな手腕は食の喜びに飢えていた鉱山夫たちを夢中にさせるだけでなく、
仕事に関心を持たなかった魔族たちまでもが飛びつき、
気付けば寂れていた酒場は、国で最も活気づく場所に生まれ変わっていた。
「――まったく、驚いた。貴公は食べ物だけで、この国をまるっきり変えてしまったな。
この窖も随分と風通しが良くなったものだよ。城まで笑い声が届いてくる。
皆に代わって礼を言おう。酒造ヒッポカムポスの、そして貴公の手腕は素晴らしいものだ」
「ふ、よく口が回る。だが、お前がそう言ってくれるなら素直に受け取るとしよう、色男。
さて。これで一段落と言うなら、次にすることは決まっているだろう?
行こう――ヘリオス。祝杯だ!皆が、お前が齎した楽園で待っている」
この男の鮮やかな生き様を、もっと見ていたい。
ディアの心に、小さな願いが芽生えた瞬間だった。
―――
「なあ、お前は、私達という存在をどう思う?」
友人として語らうようになって、暫く立った頃のこと。
その日はどうにも悪酔いしている自覚はあった。
それなのに、隣にいてくれる温もりに甘えて、口から零れる言葉を止めることができなかった。
「なんとなく察していたかもしれんが、私達は――『作り物』でな。
まあ所謂生物兵器という奴だ。そこにあらゆるものを合成する魔術を付け加えて……、
一種の呪いを作ろう、と。大筋はそんな実験だったらしい。
食事が要らないのはそのせいだ。使用者の都合で動く存在でなければならない。
何なら、私以外は眠りもいらんな。寝台で目を閉じて朝を待つ事ならできなくもないが。
前に私は〈脳〉だと言っただろう。だから他は、〈手足〉になるよう造られているのさ。
始まったものは覆らない。わかっている。だが、考えてしまう。
食べず、眠らず、番わない私達は、生き物と呼べるのか、と。
……私達はすべてを取り戻したなら、在るべき姿に還れるのだろうか」
言い切ってから、後悔した。
立場も彼の気持ちも考えない、あまりにも身勝手な吐露だった。
すぐに逃げ道を思い付く。そうだ、冗談だと、笑って煙に巻いてしまえばいい。
咄嗟に続けようとしたその瞬間、己の手に重なった温もりにすべての時が止まる。
そうして与えられた言葉は、いつからか思い描いていた、他の誰でもない『彼からの許し』だった。
―――
彼を望み、そして望まれるようになって幾年が過ぎた頃。
数多の仲間を見送り、同時に連れ帰って来たディアに、ついに終わりが訪れる。
その日取り上げた子は己と同じ角を持って生まれた、群れの指標となる〈ブレイン〉だった。
彼の齎した楽園の恵みに抱かれたその子は、きっとこの国に新しい風を吹かせるのだろう。
ディアはかつて己がされたように、次代へとその座を引き渡した。
「私にも幕を引く時がやって来たらしい。ふふ、旧型はさっさと去る事にするさ。
さて、これからは……還らないよ。私は本能に抗ってみようと思うんだ。
どこまで行けるかはわからない。誰も試した事はないからな。
残り幾何もない命だが、最期に道のひとつくらいは弟達に示してやれるだろう?
……それに、何よりも私はお前の隣に居たくなってしまったんだ。もう何処にも行けないさ。
ヘリオス――どうか連れて行ってくれ、お前の生きている世界に」
良くも悪くも己を庇護していた天盤はもうないが、彼の手を取る事に一切の迷いはない。
そうして、ディアは己を生み出した神へ叛逆し続ける道を選んだ。
――――
◆地底都市フォーリンマージ-Fallinmerge-
鉱山都市として発展途上にある都市国家。
国と同じ名を冠した魔族と、外部からの労働者によって構成される。
投稿内容に問題があった場合は、お手数ですがメッセージでご連絡いただけると幸いです。
2017-01-31 15:11:02 +0000