【白日】友永幸路【花】

梅雨

✯こちらの企画に参加させていただきます 「白日の彗星」【illust/59790166

✯友永幸路
 17歳/男/169cm
 貧乏大家族の次男坊
 学校の屋上から自殺を試みたことはハッキリと覚えている。
 後悔しているかしていないかは微妙なところ。
 死んでもいいと思ってしまったことは確かで、そんな気持ちが自分の中にあったことに驚いている面が大きい。
 でも仕方ないかとも思っている。
 一人称:俺 二人称:お前、呼び捨て、~サン

✴素敵な流星さまと再会しました
 衛藤えれなさん【illust/60787147】(生前:衛藤先生 星の海:えれなサン 転生後:小野江さん、えれなサン、衛藤先生)

高校への憧れは確かにあって、兄ちゃんが通ってた学校に入学できて本当に嬉しかったんだ。
お古で新しい制服じゃなくてもさ、新しい教室とか、新しい環境とか、そう、新しい出逢いとか。
衛藤先生に出逢ったのも、そんな新しいものの中。

先生は英語の担当で、本当に綺麗な声で本を読み上げる。
それにしても、英語ってこんなに面白かったっけ?

「衛藤先生の教え方、すっげーわかりやすいっていうか、気持ちいいって感じ? なんて言ったらいいのかよくわかんないけど1番好きな授業なんだよね。だから全部解るようになりたいので! 教えてください!」

何でも話してって言うからさ、なんでかな。
どんなことでも不思議と話してしまうんだよね。

「うちの親父がさ……ってごめん、変な話ばっかりしちゃって。格好悪いなあ、俺」

甘えてんのかな。
だからせめて他のとこで格好つけられるようにさ、頑張ってたっけな。

心地よい空間、慌ただしく生きる、束の間の安らぎ。
――二人の時間はいつか終わってしまうと知っていたけれど、それは絶対にこんな形じゃなかった。

衛藤先生がいなくなって、何かがぽっかりと空いてしまって、いるはずのない場所に先生の気配を探してる。
先生の席に、新しい先生が座って、何事も無く時が過ぎていくことが、どうしようもなく、哀しくて、腹立たしくて。

成績がどんどん落ちていく。進路のことも考えないと。クソ親父の酒代がまた増えた。弟たちの喧嘩の仲裁しなくちゃな。

色んな悩みがごちゃ混ぜになって、なんで溜まっていくのかって考えて。
そしたら、衛藤先生がいないことをまた思い知らされる。
どうしようもなく、逢いたくて堪らなかった。
よく死んだらお星様になったって言うだろ?
だったら衛藤先生は空の上にいんのかな、空に行ったら会えんのかな、馬鹿だねって、先生は笑うかな?
まあいいや、その言葉ですら恋しいんだ。
そうやって屋上の縁を蹴ったんだ。

「俺の人生は……幸せ、だったんだと思う。あの人がいなくなるまでは」

初めて逢った人に何言ってんだって思ったけど、不思議と懐かしくて、何でも話してしまいそうになる。

「きっとあの人が俺の生きる希望だった」

(ずっと、好きだったのだと知ったのは何時だったんだろうなあ)



えれなサンはあの人に似ていた。
あの人と過ごした夕暮れ時の教室で二人、内緒だよって食べたチョコレートの味を思い出す。
あのチョコ、もう一度食べたいなあ。
きっとあの時と同じ味はしないだろうけれど。

「後悔って言うのかな、そういうのはたくさんあるはず、なんだけどなあ。どうしよう。えれなサンといるの落ち着くからこのまんまでもいいかなって……ははっ、駄目かな、そんなの」

生きていてほしいって、えれなサンは言った。
そう、だよなあ。
ってぼんやりしてたらさ、大好きって、えれなサンが言ったんだ。
あんまりな不意打ちじゃね!?

「だ、だいすきって!?は!?俺のこと!? ……ちょっと戻りたくなくなるから辞めてよ……。でも、ありがとう。俺もあなたに会いたいよ、えれなサン」




――気が付けば学校の屋上に立っていた。
衛藤先生がよく身に着けていたネックレスが、手の平の中にあって、あれは夢ではなかったのだと告げていた。
紫色の石が光りに透けて輝いている。


この世界にえれなさんはいないけれど
この世界はえれなさんがくれたもの。


がむしゃらになって勉強して、親にも兄にも頭を下げて大学へ行かせてもらうことになった。教師になりたかった。あの人と同じ場所に立ちたかった。




母校へと赴任が決まった春のこと。
馴染みのようでそうでもない、新しい空気、新しい、出逢い。
彼女に出逢ったのも、この春のこと。

「はは、ありがとう。良い名前でしょ? 先生もこの名前が好きでね、ずっと前にも――(まさか、ね?)」

まさかはそのまさかだった。

「いやいや、衛藤先生だったとしても君は別の人間として生まれたわけで。もっと自由に生きるべきだよ。こんなオジサンに現を抜かしちゃダメダメ」

俺だってさ、貴方に会えるのをずっと待っていた。
でもさ、待っている間にも歳を取っちゃってて。
若い貴方の未来を奪うなんてそんなのさあ。

それでも、俺はね、駄目な大人かもしれないな。

「も~負けです、俺の負け」

なんだよ、アメジストのネックレス、めちゃくちゃ効果あんじゃん。


「あなたを愛しています」


...キャプションは随時編集

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2016-12-25 13:21:00 +0000