突如現れキテルグマを倒した青いカイロスは、辻助とメガサーナイト、連れてきたパチリスの無事を確認すると満足げに頷いた。(パチリスは目を回してダウンしているようだが。)
「ブルーハーツさん!」サーナイトが笑顔で声を掛ける。どうやら知り合いのようだ。
「あのピンクの熊にはびっくりした…本当に助かったよ、ありがとう」
青く広がる南国の風景の中、和やかな空気が流れだし、場の緊張感はほぐれていく。
「君も無事か?助けに入ったのに一緒に逃げることになってしまってすまなかった!」
もう大丈夫、そう思っていつものようにこっそり立ち去ろうとしていた辻助は肩を跳ねさせた。
「…えっいや…私は」明らかに狼狽した様子を見せる彼に、サーナイトは言葉を続ける。
「そういえば自己紹介もまだだったな!私はクル・レージュ。クルと呼んでくれ!」
はきはきと喋る彼女は隣にいる青いカイロスに視線を移す。
「こちらはブルーハーツさん。私たちはスターバスターという討伐ギルドに所属している。」
ブルーハーツ、と呼ばれたカイロスは少し得意げな気配を滲ませながら再び頷いた。どうやら彼は喋れないらしい。
「それで、君の名前はなんていうんだ?」
その問いかけがくることは必然的であるものの、辻助の思考は凍り付く。いつもそうだ。
辻助、というのは周りが勝手につけた、所謂通名というやつであり、本名ではない。彼自身はその通名に関してあまり語ることはないが、どこかで自分には過ぎた名前であると感じていた。
よって通名を彼自ら名乗ることはまず無いのだ。しかしながら本名を名乗ることもまた、良しとしていない。
「…好きに呼んでくれ」
そうしてこの味気ない返事にいつも辿り着く。彼の心中は苦虫を嚙み潰したような感覚でいっぱいなのだが。
「そうか、じゃあ…そうだなあ…」 素直に受け取ってくれた彼女に心の中で少しだけ感謝をする。
「あれれぇ~?もしかしてぇ、さっきいたところと景色が違っちゃったりする?」
呼び名を考えていたクルの足元から、やけに甘ったるい声が響いた。目を回していたパチリスが目を覚ましたようだ。
明らかに苦手なタイプの性格であることを察した辻助はスッと距離をとる。対照的にクルは太陽のような笑顔を浮かべて声を掛けた。
「ひょっとしてぇ♡ボクってばかわいすぎてテレポートまで使えちゃうってこと?タイプまで越えちゃうなんて、ボクってば罪深い♡♡♡」
…が、自分の世界に入ってしまったらしい。全く声が届いていない。
和やかな空気がぬるく切り替わる。しかしその切り替わりがトリガーとなって辻助は茂みや海の中にいくつかの殺気を感じ取った。
…完全に気を抜いていた。ブルーハーツとクルも同じく気づいたようで、周りを見渡している。
数は3。この気配は…ゴースト…?いや、少し違う。これは…ダークマターか!
認識したその瞬間。
オンミョーン!!という特徴的な鳴き声と共にとびかかってくる影、掠めるシャドーボール。姿はミカルゲだ。
「次から次へと実に騒がしいな!」シャドーボールを避けながらクルが叫ぶ。
「君も戦えるな?」自分の事だろうか。辻助は少し考えたがとりあえず頷く。
「そうか!ならば少し手伝ってくれないか?」ブルーハーツもこちらを見ている。ふたりの視線に少し足が震えたが、正解だったようだ。いあいぎりの刃を構えることで返事をする。
ここで辻助は一つの違和感を覚えた。
―助けるべきポケモンがいない―
自分が戦う時は大抵、誰かを助け、護る時。しかし今回はクルもブルーハーツも戦いに慣れている様子。パチリスは未だ自分の世界に入り浸っているものの、おいそれと死ぬようには見えない。
誰かに背中を預ける、とはこういう状況を言うのだろうか。初めて会ったばかりの者達に対してとるには大変リスクの高い行動ではあるが、頭の隅で悪くないとも思ってしまって。
舌に隠れた口角が少しだけ上がったことには、周りの三にんはもちろんのこと、
辻助自身も気づいていなかった。
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ワスレナトウボウ【illust/60304126】
↓
瞬虫殺【illust/60346217】
↓
ここ
キャプション小説とかいうのを書いてみたかったわりばしが通ります。どうでしょうか。どんなかんじでしょうか。めっちゃ楽しかったですヘヘヘ///
【お借りしました】
クルさん【illust/58233245】
ブルーハーツさん【illust/58307389】
トイフェルさん【illust/57708326】
辻助【illust/57842979】
2016-12-14 22:48:50 +0000