「コッソリックス」
タンスから靴下がどんどん消える。それもお気に入りの高価なものばかり。きっとジジの仕業だろうなんて思って寝床を探すけれどなんにもなくて、あたしは素直にあやまる。ごめん。ジジ。血統書付きのお前を疑ってって血統書と盗癖は全然関係ないし、疑われたことを当のミニチュアシュナウザーは何にも気にしていなくて、いつもは折れてる右耳をピンと立ててあたしの言葉を聞いてる。何かくれるのって顔で。
靴下を探してこたつをひっくり返すけれどいつも通りのジジお気に入りの毛布の切れ端しかなくて、ごめんごめんと取ろうとしたわけじゃないよ吠えるジジに謝るあたしは、でも視界の隅で私のお気に入りのオレンジのアーガイル靴下くんたちがてれてれれくたくたと歩いているのを見つける。はい、何でしょう。
何だかわからなくなって、ジジの名を呼びながら抱き寄せて、ふっと耳に息を吹きかけてGOの号令をかける。ちゃかちゃちゃとフローリングを爪を立てて走ってアーガイルに突進していく。ケモノの気配に気がついたらしいアーガイル靴下くんたちはそれまでのくたくたひれひれから一変してすうとその体を伸ばして足を入れる履き口を下にして直立。そこから真っ白な煙ををジェット機のように噴射して飛んで窓ガラスをつきやぶって何処かへ消える。
ジェット噴射とガラスにに驚いたジジはあたしのところへ帰ってきてくぅ甘えるように鳴く。
窓ガラスを片付けながらあたしは考える。
あれは、きっと靴下に擬態した何かだったんだろうな。というのが今のところの決着で、とうぶん三足千円の安靴下を使うだろう。
2016-11-29 10:16:38 +0000