【花冠】胡春【マドイビト】

ににこ
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◆企画元:花冠を戴く者【id=55830776】/企画内イベント【id=59919758】

雁音胡春(コハル・カリガネ)
33歳~/男/178cm 一人称:僕/二人称:君 名前は呼び捨て
連れているビッシュの名前は「きびだんご」
何かに怯えたような顔をしている

◆◆◆
11/29 素敵な呼応関係を結んで頂きました
 決して特別なものではなく、何気ない日常の中にこそ
 家族の愛情があったことに気付かせてくれたルクリアさん【illust/59739755
◆◆◆


誰からも愛されていないと思っていた。
他の誰もが、誰かから愛されているのに
自分は誰からも愛されていないと。

伴侶を得れば、その伴侶からは愛されるだろうと思っていた。
でもやがて、その愛は子供に移っていく。
誰もを分け隔てなく愛するその姿は、僕にとってはまったく不要な姿だった。

――今思えばただの我儘でしかない。
その頃の自分は、それに気づくことができなかった。
まだ小さく、しかし後戻りのできるその思いを運悪く魔王に捉えられ、
魔王によって思いを増幅させられたとか、歪められたとか、そういう言い訳はできる。
でも僕はそうしたくない。
これは僕自身が選んで受けた報いで、僕が背負うべき咎。

◇◇◇

この大陸には、悩み苦しみ妬み嫉みを抱えている者が数多くいた。
だから魔王の呼びかけによって、もう一つの
「僕らではない僕らが何も知らずに幸せに暮らす大陸」
に喜んで向かう者が多かった。
思えばこれも操られて向かって行ったんだろうけどね。

僕は、もう一つの大陸に住まう僕が幸せに暮らしていたら
現実を知らせてやろう、くらいの気持ちでその大陸に向かった。
行かない、という選択肢はなかった。

思いのほかもう一つの大陸は幸せに満ちていた。
当たり前のようにある幸せ。愛情。
そんなものは上辺のものでしかないのに。

忌々しい思いでその様子を見つめながら、適当に目を留めた者の前に降り立つ。
見ただけでも分かるくらい、当たり前に幸せを享受していそうな、そんな雰囲気の女性。
驚いたような顔をした彼女に開口一番言い放つ。

「君は家族に愛されている?幸せ?」

突然投げつけた質問に、しかし迷うことなく愛されている、と幸せそうに語る姿は
概ね予想のつくようなものだ。
しかし、その当たり前の感情に触れ、黒い炎がぼぅ、と音を立てる。

「随分と幸せそうに生きているんだね
 家族に愛され、求めてくれる人がいて、何の不安もなくて
 ――ねえ、その幸せは本当のモノ?
 偽りで覆い尽くされた幸せではないの?」

突きつけられた黒い刃の切先を目の前に、しかし彼女は迷いなくそれを否定してみせる。
要するにそんなことで迷い悩んだことなどないのだ。
そう、態度に示されている。
その態度を見ているうちに、こちらが迷い始めたことに気付いた。
僕のその様子に気付くことはなく、彼女は「例えば」と言って
自分がどういうときに幸せを感じたとか愛されていると思ったとか
そんなことを話し始めている。
耳を傾けてはいけないと思うが、それを止めることはできなかった。

彼女が語る事は、それのどこが幸せなのか、愛されているのか、と思うようなことばかり。
でも彼女はそれを幸せそうに語る。
その様子を見ていて何となく、幸せというのはそのものではなくて
それを幸せだと受け止める気持ちのことなのかとぼんやり思った。
そう思ったあたりから、何だか馬鹿馬鹿しくなってしまい思わず彼女の言葉を遮った。

「あ、いや、別に話がつまらないとかそういう訳じゃない。
 そうじゃないんだけど――ちょっと今の僕には全てを受け止めることができなくて」

「少し自分の中で整理ができたら、また君の話を聞かせてくれないか。
 僕の名前は胡春。君の名前は?」

ルクリア、と名乗るその女性とは、それから時々話をするようになった。
殆どはルクリアの話を聞くことが多かったが、時には僕自身の話をすることもあった。
それを彼女は眩しいものを見るような瞳をして聞いていた。
そして、そういうのを幸せって言わないんですか、と僕に問うてきた。
そうなのかな。
僕にはまだよく分からない。
でも、彼女が言うならそうなのかもしれない。
彼女は僕が知らないものを知っているから。

気づけば黒を纏っていた刀は、いつしかその闇をなくしてしまっていた。
魔王からの呪縛から逃れたのかもしれないし、違うのかもしれない。
それもまた僕にはよく分からなかった。

◇◇◇

今日もルクリアは幸せそうに家族の話をして聞かせる。
最近はもう一人、登場人物が増えたようでそれもまた微笑ましい。
そうして話を聞きながら思う。
この大陸に住まう僕は、ちゃんと幸せにやっているだろうか。
互いを愛し合い、尊重し合って日々を過ごし
どんなに小さな幸せも、幸せとして受け止めることができているだろうか。

願わくば、彼が僕のような思いをしていませんように。

◇◇◇

マドイビト達が花の様に雪の様に光を纏い消えていく様を見、
また自らもそのようになりながら思う。
この大陸で体験したことはきっと忘れないだろう。
この美しい大陸に降り立つことが出来たことを幸福に思いながら

――ああ、幸せってこういうことなんだ

◆◆◆

通常CS【illust/58752637】(第四期)
…伴侶 花雪【illust/58778719
…子 兄:縁【id=59304185】/弟:衣駒【id=59241444】
 
◆Weapon*暁の黒霧刀
:胡春の祖父が打った刀
 暁色の刀身に黒い霧を纏っており太刀筋は霧散して視認しづらく
 斬られて初めて目の前に刀が迫っていた事に気付く者も多い

◆Key*家族の愛情

◆継承種族
カリガネ【7169298】エノワ【57165181】カランシア【57192439】
クィエルツ&ビッシュ【57176968】錫羽の一族【57224329】
 
◆Skill
黒紅胡の主旋律
:禍々しく響く胡弓の音と共に生み出されたモノを持つことで
 それを持つ者の憎悪を増し、その憎悪を戦う力に変える能力を与える
 胡春は左手につけている数珠にこの力を与えている
薬草の知識
:母からその知識を受け継いだものの、できる薬は失敗作ばかり
ステルス
:黒い霧に姿を変え、闇に紛れる
呪術
:家族を愛することができずに呪う事しかできなかった者の
 思いが宿った首飾りをつけることで様々な呪いの式を打つことができる
 呪いによって相手の動きを封じる、自分に向けられた魔力を打ち消す等
 ※現在は首飾りを失っており呪術は発動しません

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2016-11-20 13:25:17 +0000