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船への招待状を渡してみたはいいものの、そのナラズ者らしき女性は、一向に紙を受け取る様子がない。
そもそもこの種族は手が無いから、という理由はこの世界では通用しないのだが、
それよりも焦点の合わない瞳が、紙に一度も目をくれない赤い瞳が気になった。
はじめは「文字が読めないのか」なんて突拍子な考えが浮かんだりもしたものだが、
そうじゃない。「文字に興味を持ってくれない」のだと、すぐわかった。
彼女の浮かぶ場所の足元、地面におぞましい気配を感じ、背筋が震えた。
本能で彼女と距離を取る。好意をあだでなんたらなどと考える余裕はなかった。
気配はやがて地面から顔をもたげると、黒いぬるりとした手の形をとってこちらへと迫る。
あれは、冒険を志す者のひとりとして、よく知っている。
きっと、いや間違いなく、世間を騒がせる悪意『ダークマター』に違いない。
そうか。彼女が興味があるのは自分だ、とすぐに悟った。
だから招待状に目もくれず、その悪意で自分を食らいに来たのだ。
――まいったな。トリートなんて甘い考えは、悪魔には通じないようだ。
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【illust/59735057】のおかえし!
どうやらひとりでも多くダークマターで喰らいたいらしく、見境がないですこいつ。それでいいのかこいつ。
*レッドさん【illust/57708294】 おばけ~【illust/59635645】
2016-11-07 03:08:17 +0000